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読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り 【窯修理編・フチミと色見穴】

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フチミの準備段階・アブリ

そもそもなぜ空焚き作業が必要なのか。それは、そのまま火入れをすると、土に混ぜたわらが落ちてしまったり、屋根に残る湿気が釉薬に悪影響を及ぼしたりして作品を損なってしまうことがあるからです。

実際に、出来上がったばかりの屋根を見てみると、わらが所々飛び出しているのがわかります。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、わらが所々飛び出している様子空焚き作業の「フチミ」には準備段階があり、それは「アブリ」と呼ばれています。

「アブリ」は窯の内部を弱火で燃やす作業。内部にすすがついて屋根から水蒸気が出なくなる程度が目安となるそうです。土の状態などを見ながら調整するのですが、今回は1日約8時間、3日間にわたって行われました。読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯の内部を弱火で燃やす作業アブリ

各袋の中央あたりに置かれた薪を燃やす炎が、窯の内部を照らし出します。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯の内部を弱火で燃やす作業アブリ

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯の内部を弱火で燃やす作業アブリ

屋根からは煙とともに白い水蒸気が立ちのぼり、入口周辺には所々黒いすすがついています。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯の内部を弱火で燃やす作業アブリ

私がうかがったのは3日間行われたアブリの最終日。屋根の土はかなり乾燥が進んだような印象でした。

7番の袋の狭間(さま/炎の通り道)は6番からの熱気が上がってこないようふさがれています。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、7番の袋の狭間(さま/炎の通り道)

色見(イロミ/イルミ)用の穴を開ける

翌日、アブリを終えた袋の様子はこちら。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、アブリを終えた袋の様子読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、アブリを終えた袋の様子

全体にすすがつき、表面が真っ黒になっています。

この日に行われたのは色見(イロミ/イルミ)用の穴を開ける作業。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

温度計を使わない北窯の窯焚きでは、色見は窯の様子を見極めるとても重要なテストピース。

それを鉄の棒で取り出すため、方向も角度もしっかりと色見を置く棚に向かうよう調整しなければなりません。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

まずは外側と内側からだいたいの位置と角度を決め、印をつけます。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

ドリルで穴を開けます。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

ひとりは外側に立って方向などを指示。壁に阻まれて聞こえづらいため、互いに行ったり来たりしながら作業を進めることもありました。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

穴が貫通した後は、ノミやハンマーなども使い、微調整しながら仕上げていきます。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

窯焚きの際、色見を取り出すとき以外は炎が噴き出すのを防ぐために蓋を置きます。その蓋がきちんと置けるかどうかもチェック。

この時は少し修正が必要だった様子で、土を足して微調整し、完成となりました。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、イロミとよばれる穴を開ける作業

 フチミ

色見穴が穿たれた後には、窯焚き前のようにブーラを使って袋の入口をふさぐ作業が始まりました。少し違っているのは、下部が密閉されず、薪を投入する広めの窓とともに空気穴となる細い隙間が作られていること。読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

炎が勢いよく噴き出さないよう3~5cmほどの幅になっています。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

フチミが始まったのは翌日の朝から。

10:00頃にうかがうと、5番の袋にはすでに薪が投入されて赤々と燃えていました。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

空気が入りやすい狭間のある右側から燃やしはじめ、ゆっくり左側へ火を移動させていくそうです。フチミは約3時間程度、最初の2時間は腰の高さ程度の火で、残り1時間で壁を舐めて天井まで届く大きめの火をおこします。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

反対側からも薪をくべるのは窯焚きと同様。内部の温度は450~600℃ほどになり、アブリでついたすすが切れて黒い色が消え、わらも焼き切れていくとのことでした。

窯焚きの約半分程度の温度とはいえ火勢が強くなると一気に炎が噴き出すこともあり、油断はできません。読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

窯焚き同様に、温度計を使わず行われるフチミ。

刻一刻と変わる火と窯の状態を見極めるのには五感を総動員しなければなりません。隣の4番の袋の狭間から火の様子をうかがったり、屋根に上って直接触れて温度を確かめたり。読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

集中しつつどこか楽しそうな親方や陶工たちの姿がとても印象的でした。

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業

この後、6番の袋にも同様に狭間の部分から火が入れられます。

窯焚きの場合、火入れが次の袋に移る際に入口を密閉しますが、フチミの場合は窯を乾燥させるため隙間はそのまま。熱が冷めたら入口のブーラを取り除きます。

約2カ月間、4つの工房の親方と陶工たちが協力して行ってきた登り窯の修理の、すべての工程がこれで終了となります。

おわりに

フチミが行われたのは2月末。

窯の内部の掃除や道具のメンテナンス、窯詰め作業などを経て、3月26日には、北窯は第144回となる窯焚きを迎えました。

メーガニクで美しく塗られた登り窯。真新しい装いの5番と6番の袋にも、たくさんの作品が並べられていきます。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、火入れ前の窯読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、火入れ前の窯

夜も更けた頃、すべての袋の入口がふさがれ、いよいよ火入れです。
読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯に火を入れる読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯に火を入れる

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯に火を入れる

読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り、窯に火を入れる

いつも通り、この場に居合わせた全員が窯口で燃え上がる炎を前に祈りを捧げます。

前回に続き、私も参加させていただきました。登り窯の前に立つほんの十数秒の間に、前回11月末の窯焚きから約4カ月の間に見てきた様々な光景がスライドショーのように頭を巡ります。

土を混ぜることから始まるやちむん作り。それに加えて行われてきたふたつの袋の修理の過程。親方と陶工たちが知恵をしぼり、自然の力を借りつつ労も手間も惜しまず働いた結果が今この瞬間を作っているのだと改めて感じ、人間の持つ力、自然の力に心から尊敬の念がわいたのを鮮明に覚えています。

お送りしてきた「読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り」も、窯の修理とともに終わりを迎えます。

次回、最終回は総集編。窯焚きまでの間に行われているこまごまとした作業をとりまとめつつ、これまでお伝えしてきた内容を振り返り、締めくくりとさせていただきたいと思います。

どうぞ最後までおつきあいくださいませ。

よみたん やちむんの里

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この記事を書いた人

言葉、文化、自然、習慣、その他諸々にカルチャーショックと感動を経験しつつ沖縄に住むことかれこれ20年超。

すっかりなじんでいますが、一応九州産の移住者です。長く日常を過ごしているからこそ見える沖縄の素敵なもの、おもしろいものをご紹介していけたらと思っています。

大好物はおいしいもの、歴史を感じるもの、旅行、取材。必要に迫られ、大の苦手だった英会話を勉強中です。

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