上手に耳抜きできないときの対処法
それでもダイビング中に耳抜きが出来なかったらと…不安な方もいらっしゃるかもしれません。
ですがそんな時でもダイビングを諦めることなく楽しめるように、ここでは耳抜きがうまくできなかった時の対処法をお伝えします。
落ち着く
実はダイビングを引率させていただく中で、耳抜きが出来ないとおっしゃる方の多くが、一旦落ち着いてゆっくりやり直していただくだけでできるようになります。
ダイビングで水中に潜る、という慣れない環境への恐怖心などで慌ててしまうと、耳抜きを忘れてしまう、息を止めるのを忘れてしまう、耳抜きの方法自体を間違える、など初歩的なミスをしやすいです。
耳抜きができていないと思ったら、まずはBCD(浮力調整器具)に空気を少しずついれて中性浮力をとるか、潜降ロープなどをつかんで、潜降するのをやめます。
それより深く潜らなければ鼓膜を傷付けることもありませんし、大きなトラブルになることもありません。そして一旦深呼吸をして、落ち着いてからゆっくり優しく行いましょう。
ハンドシグナルを使用する
上記でもお伝えした通り、耳抜きがうまくできていない場合は、それ以上無理に潜降する必要はありません。ですが、インストラクターやバディが先に潜っていってしまうと不安を覚えて慌ててしまう方もいらっしゃると思います。
そんな時は「耳が抜けていない」という意味を示すハンドシグナルを使用して相手に伝えましょう。
耳が抜けていない場合のハンドシグナルは非常に簡単で、人差し指で耳を指さすポーズをしてもらえれば大半のインストラクターは理解できます。
余裕がある方は抜けてない方の耳を指さすようにすると、インストラクターからアドバイスやフォローがしやすくなるので、覚えておいてください。
少しだけ水深を浅くして耳抜きをやり直す
一旦止まり、落ち着いてやり直してもどうしても耳抜きがうまくできない場合は、その水深から50cm~1mだけ浮上してもう一度耳抜きをしてみましょう。潜降ロープを使用している場合は、こぶし5つ分程度が目安です。
先述した通り、水中では最初の水深3mは特に気圧変化が激しいので、50cm水深を浅くしてあげるだけでも耳にかかる負担が軽減され、耳抜きがしやすくなります。
逆に抜けないからと言って慌てて一気に水面まで浮上してしまうと、中耳腔内や肺の空気が一気に膨張してしまい、思わぬ重大なトラブルを引き起こす場合があるのでやめましょう。
首をゆっくりと伸ばす
水中で首をゆっくりと伸ばして首回りや耳管の筋肉をリラックスさせてあげるだけでも、耳抜きがしやすくなります。片耳だけ抜けていない場合は、抜けていない方の耳を上に向けて空気を送り込むように伸ばすと効果的です。
耳の後ろ辺りをマッサージするように揉んで、緊張をほぐしてあげると抜けやすくなる方もいらっしゃいます。
潜降スピードを緩める
潜降スピードが速すぎると耳抜きのタイミングが間に合わず、抜けづらくなってしまいます。その際は少しずつBCDに給気をして、潜降スピードを緩めるようにしましょう。
特に初心者の方やブランクダイバーの方は、潜降途中にBCDへの給気を忘れ、中性浮力が取れずに潜降スピードが途中から一気に速くなってしまう方が多いので注意が必要です。
潜降ロープを使用する
潜降スピードの調整に慣れていない人や、耳抜きに自信がない人は、無理をせず潜降ロープを使用しましょう。潜降ロープを使用することで姿勢も安定し、潜降スピードも自分で調整できるので、落ち着いて耳抜きをすることができます。
鼻の押さえ方を工夫する
普段は耳抜きができるのにダイビングになると耳抜きが出来ないとおっしゃる方の中には、マスクの形状や鼻の高さ、マスクの装着位置、グローブの有無など様々な理由で鼻をきちんとつまめておらず、抑えられていない方が時々いらっしゃいます。
その際は鼻の穴をつぶすイメージで下から押さえる、両手の人差し指を使って左右から押さえる、上方向から押さえるイメージで鼻をつまむ等、自分のやりやすい鼻の押さえ方を見つけ、実践していきましょう。
耳抜きをしやすくするには?
実は耳抜きは、ちょっとした心がけや普段の生活の中で練習することで簡単に上達できるスキルです。ここからは様々な耳抜きの上達方法、耳抜きをしやすくするコツをお伝えします。
自分に合うマスクを選ぶ
ダイビング用のマスクには非常に色々な形があり、マスクの鼻部分の高さや抑える際の指の入れ方、シリコンの硬さなどがそれぞれ違います。
マスクを購入する際は様々なマスクを実際にフィッティングしてみて、自分の顔の大きさに合うかどうか、自分の鼻がつまみやすいかどうかをきちんと確かめてから購入するようにしましょう。
例えば下の2つのマスクの写真を見比べてもらうと、鼻の部分の形状、高さが違うのがお判りいただけます。
このように、デザインだけでなくサイズや大きさが自分の顔のサイズにぴったりフィットしたマスクを選ぶことが大切です。
飲酒や喫煙を控える
ダイビング前日に飲酒をすると、寝不足による体調不良やむくみなどが生じ、耳抜きがしにくくなることがあります。ダイビング前日には深酒はせず、きちんと体調を整えておくのがおすすめです。また喫煙も炎症を引き起こす原因になるので、ダイビング当日や直前は控えるのがおすすめです。
普段の日から空き時間に練習する
耳抜きは練習することで上達します。実は私自身、人生初めてのダイビングの際は右耳が抜けず痛いまま終わってしまったのですが、その後どうしてもダイビングをもう一度楽しみたくてライセンス講習を申し込み、講習開始までの1週間、すき間時間に耳抜きをする練習を繰り返していました。
その甲斐あって少しずつ耳抜きのコツをつかみ、ライセンス講習時には無事に耳抜きすることができ、ライセンスを取得することができました。
日常生活の中での耳抜き練習は、リラックスして様々な方法を試し、自分はどの方法が一番抜けやすいかを検証してみるいい機会にもなるので、ぜひおすすめです。
耳の周りをマッサージしておく
ダイビングの前日や当日に、耳の周りの筋肉をほぐすようにマッサージしておくと、筋肉の緊張がほぐれ、耳抜きがしやすくなる方もいらっしゃいます。
マッサージは痛くない程度に、筋肉をほぐすように優しく行いましょう。
耳鼻科の先生に相談する
どんな方法を試してもどうしても耳抜きが出来ない場合は、耳鼻科の先生に相談すると処方箋での治療や、専門的なアドバイスをもらえる場合があります。
また、ごく稀に生まれつき耳管の形状等の関係で耳抜きが出来ない方もいらっしゃるので、何をしても一切耳抜きができないという方は、一度検査してもらうと安心です。
耳抜き上達のためのおたすけグッズ一覧
練習をしてもどうしても苦手な方や、いざ海に入るとなるとやっぱり不安になってしまう方などのために、耳抜きを助けてくれる便利な耳抜きおたすけグッズをご紹介いたします。
オトヴェント
オトヴェントは耳鼻科で鼻炎治療のために使用される器具ですが、最近では耳抜きの練習にも用いられます。
これを使用して耳抜きの練習をしておくと、ゆっくりと耳管が開き、中耳腔内に空気が送り込まれる感覚が解り、耳抜きができた感覚を覚えることができます。また、繰り返し練習することで耳管が広がりやすくなり、耳抜きがしやすくなります。
ドックスプロプラグ
こちらはダイビングやサーフィンなどのウォーターレジャー専用に開発された耳栓です。
耳栓の部分には小さな穴が開いて、潜降時に鼓膜にかかる水圧の変化を減少させ、耳抜きをしやすくしてくれます。ドックスプロプラグは実際に私も使用しており、金額がお手頃でかさばらないため、重宝しています。
※普段よく目にする完全に耳の穴をふさぐタイプの耳栓は、ダイビングでは使用できませんのでご注意ください。
プロイヤー2000 ドライイヤーマスク
こちらのマスクは耳の部分にカバーがついており、その中に空気を送り込むことで耳抜きをしやすくしてくれます。
また、イヤーカップがついていることで水中での音も聞き取りやすく、冷水でのダイビングでも耳抜きをしやすくなります。
GULL マンティスフルフェイス クリアシリコン
こちらはレギュレーターをマスクに装着し、顔全体を覆うタイプのマスクです。フルフェイスマスクを使用すると、レギュレーターを加えなくて済むので、普段あくびや嚥下法で耳抜きをしている人は耳抜きがしやすくなります。
また基本的には顔が濡れず鼻呼吸もできるので、初心者や体験ダイビングで不安が大きい方、水が怖い方などにもおすすめです。
まとめ
耳抜きはその日の体調や個人差があるスキルではありますが、先天性でどうしても抜けない方は、私が引率させていただいた方々の中でも1,000人に1人いるかいないかの割合でした。
自分に合う方法を見つけ、日頃生活している中で少しずつ練習をしていけば、ほとんどの方がコツを見つけて上達していきます。
また、どうしても不安な方は無理をせず、潜降ロープや耳栓などの便利グッズを使用しましょう。
耳抜きやダイビングは一度成功して楽しい思い出を作ることができれば、その成功体験が自信につながり、次のリラックスした理想的なダイビングにつながっていきます。
成功体験を積み重ねてダイビングを繰り返しているうちに、耳抜きもどんどんコツをつかんで上達していくことができます。ぜひ自分に合った耳抜き方法を見つけて、より快適なダイビングライフを楽しんでください。
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