エイサーとは?
エイサーは日本本土の盆踊りにあたり、老若男女を問わず広く親しまれている沖縄の伝統芸能のひとつ。主に各地の青年会によって継承され、旧盆(旧暦7月15日)から3日間は地域内を踊りながら練り歩く「道ジュネ―」が夏の風物詩となっています。
沖縄市・うるま市を中心とした沖縄本島中部で特に盛んで、地域によって特色ある踊りが見られます。地域によってエンサー、ヤイサー、シチグヮチモーイ(七月舞)、ニンブチマーイ(念仏廻り)と呼ばれることもあります。
平敷屋エイサーとは?
1904年、当時の平敷屋青年団長が名護市世富慶のエイサーを研究し、200年ほど前から伝わっていた集落独自のエイサーにその振付などを加えて現在の型が確立され、伝えられてきたものと考えられています(諸説あり)。
沖縄県内で最も古い形をとどめたエイサーとされ、使われる太鼓は片面張りのパーランクーのみ。現在、多くの団体で花形とされる大太鼓や締太鼓は登場しません。
青年会に入れるのは25歳までの青年のみで、ひとつの集落でありながら東(あがり)と西(いり)があることも大きな特徴。常に競い合い、技を磨くため1925年頃に分かれたということです。東は男性的で力強く、西はやわらかく女性的と言われています。
1996年には環境省の「残したい“日本の音風景100選”」にも選ばれました。
ジユーテー(地謡/三線と唄)
旗頭
ハントゥー(酒甕)持ち
太鼓打ち
踊り手
ナカワチ(世話役)
太鼓打ちは僧侶の袈裟(けさ)のような白と黒(紺地)の衣装に裸足、派手な動きや早弾きの曲はなく、終始ゆっくりとしたリズムで進みます。
足の運び、腰の落とし方、バチさばきまでもがぴたりと揃えられ、整然と行われる隊列変化は圧巻。演舞中に漂う独特の緊張感と厳かさは、何度でも体感したくなる不思議な魅力を持っています。
旧暦7月15日、平敷屋集落の拝所前には県内外から多くのファンが詰めかけ、深夜まで何時間にも及ぶ演舞を見守ります。
何ができるの?
平敷屋青年会のエイサーには、集落外では踊らない曲目があることをご存知でしょうか?
毎年東西2曲ずつ作られる新作「ミーウタ」や演舞同様の熱のこもった余興がそれにあたります。平敷屋青年エイサーの夕べでは、そのすべてをじっくりと楽しむことが可能。順にご覧に入れたいと思います。
東の演舞
まずは東の旗頭と「頭」の文字の入った衣装のハントゥー持ちが現れ、時折天を仰ぐような動きが印象的な舞と口上を披露。かけ声も音も低く静かで、場の空気が一瞬で改まります。
旗頭を先頭にぐるりと円を描き、演舞がスタート。
隊列が円から1列へ。
2列の演舞。入れ替わりや変化を繰り返しながら、一糸乱れぬ動きが披露されます。
途中途中に入る休憩では、入退場門に用意された給水のコップを持って走り回ったり、風を送ったり、ナカワチたちが忙しく立ち働きます。
退場まで、整然と。ひとりひとりが最後に一礼する姿が心に残ります。
東の余興
西の演舞に移る前に、余興が入ります。東の演目は「京太郎(チョンダラー)」。京太郎は京都から来た芸能集団の「太郎」たちのことで、エイサーを各村々に広めた立役者と言われています。
黒い笠に太鼓をつけた京太郎の動きはかなりトリッキー。琉球舞踊の「じゅり馬」のような装具をつけたナカワチたちが暴れ回り、迫力満点でした。
西の演舞
西の演舞が始まります。こちらは「頭」が4人。東と同様に舞と口上で始まり、ハントゥー持ちは旗頭とともに待機していました。
会場をいっぱいに使い、演舞がスタート。
2列の隊列。どこまでも揃った動きには息をのむばかり。
曲の合間の給水ではナカワチたちが全力疾走。客席に出向き水をふるまう姿もありました。
再び円を描き、1列へと収斂(しゅうれん)。
最後に一礼して演舞を終えるのは東と同様。
西の余興
すっかり日も落ちた会場に青年会へのお礼として打ち上げられる花火。その後に始まるのが、西の余興です。
両手に松明の光を掲げ躍動するナカワチたちと、それを先導する京太郎(チョンダラー)。松明の真っ白な煙と光の残像、最初から最後まで会場をいっぱいに使い激しく踊り歌う京太郎の姿は力強く幻想的で、引き込まれるものがありました。
息を切らして演舞を終えた出演者たちには大きな拍手が。まさに全力、圧巻でした。
おまけ・東と西の見分け方
東は男性的、西は女性的、と言われる平敷屋エイサー。具体的にどう違うのか、疑問に思ったことはないでしょうか。実際に見比べてわかった、西と東の違いを見分けるポイントを3つお教えします。イベントや道ジュネーの際には、ぜひこの3点に注目してみてください。
1. 太鼓打ちの背中のタオルの形
東の太鼓打ちの後ろ姿
西の太鼓打ちの後ろ姿
東はカーブを描くよう内側の端を折り込んでいます。西はそのままですね。
2. 足とパーランクーの高さ
東の太鼓打ちの足は腰の上まで上がっていますが、
西はだいたい腰の高さまで。
微妙な違いですが、パーランクーの位置も西は腰より少し下、東はちょうど腰の高さという印象です。
3.ナカワチの衣装の違い
東のナカワチは色も柄も様々でかなり派手な装い。
西のナカワチの衣装は縞の着物に統一されています。
持っていくべきものや気をつけたいことは?
水、日焼け止め、タオル、長袖、帽子や日傘、サングラスは必須。夕方からの開催ですが、旧暦7月はほぼ夏の盛りにあたり、日中はもちろん日没後も暑さは続きます。会場に陽射しを防ぐ屋根はなく、湿度も高い時期のため、熱中症・紫外線対策は入念に。
芝生の広場に座って観覧することになるので、レジャーシートやアウトドア用のいすもあるといいでしょう。また、帰る際には足元が暗い場所も見受けられました。念のため懐中電灯もあれば心強いと思います(スマートフォンのライトでも代用可能ですが、写真や動画をついつい撮りすぎて電源がなくなってしまう場合も多いようです)。
当日は開演1時間ほど前に到着したのですが、会場は場所取り用のシートが敷かれているところも多かったです。「絶対に最前列で見たい!」という場合は早めにお出かけくださいね。
ただ、平敷屋エイサーはダイナミックな隊列変化が見どころのひとつ。会場内のどの場所から見ても楽しめますので、あまり場所取りには神経質にならなくていいと思います。
さほどの混雑はないので、移動しつつ好きな場所から見るのもいいかもしれません。
入退場門付近、また入退場門正面付近では、ずらり1列に並んで演舞する姿が見られておすすめです。
詳細情報
開催日時
2019年8月16日(金)18:00~21:30
※旧暦7月16日の開催
開催場所
浦ヶ浜公園(沖縄県うるま市勝連平敷屋3784-22)
入場料
無料
問合せ先
平敷屋青年会
電話番号:070-3802-9423
アクセス
【車】
那覇空港から約1時間10分
カーナビ設定
マップコード
499 485 442*13
駐車場
隣接の平敷屋港に駐車可
地図
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まとめ
「平敷屋青年エイサーの夕べ」、いかがだったでしょうか?
旧盆最終日、ウークイの日に平敷屋集落の拝所(神を祀る聖域)前の広場で深夜まで行われるエイサーは大切に受け継がれてきた年間行事。伝統の重みが醸す神秘的な雰囲気に惹かれ、毎年たくさんの方が観覧に訪れています。
その翌日、広い会場でのびのびと踊られる「平敷屋青年エイサーの夕べ」は、ゆったりと座り、わかりやすく語られる解説に耳を傾けながら見ることができるので、エイサーや平敷屋エイサーに初めて触れる方にもおすすめ。
お子さん連れの場合、時には深夜に及ぶ道ジュネーや大勢の観客でごったがえす沖縄全島エイサーなどには二の足を踏んでしまうことも多いかと思いますが、こちらのイベントなら大丈夫です。夕方早めの時間から始まり、ほかのイベントのような目立った混雑もありません。
音響や会場設営などの運営もすべて青年会の手で行われるなど、伝統を受け継ぎ、伝える若い世代の熱量にも驚かされるこちらのイベント。ぜひ訪れて、平敷屋エイサーの世界を堪能してみてください。
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