開催まで1年を切った2020年東京オリンピック。その正式種目となった沖縄発祥の空手は、沖縄出身の喜友名諒選手(劉衛流)をはじめとする日本人選手の活躍が期待されています。
沖縄県は2018年3月に「沖縄空手振興ビジョン」を策定して保存・継承・発展に力を注いでおり、今後も様々な取り組みが進められていくようです。
2005年に「空手の日」と定められた10月25日と直後の日曜日、沖縄では、世界へ沖縄発祥の空手の魅力を発信するためのイベントの開催が恒例となっています。今年も10月25日に沖縄空手会館での奉納演武、10月27日には国際通りを舞台に沖縄空手会を代表する方々の演武や2000人を超える国内外の空手家による一斉演武も行われました。
こちらでは、10月25日に行われた奉納演武の様子をお伝えしたいと思います。
「空手の日」って?
1936年10月25日は、「唐手」とされることも多かった表記が、公式に「空手」に統一された記念の日です。これにちなみ、2005年3月、沖縄県議会において10月25日を空手の日と制定することが決定されました。
現在から700年ほど前に沖縄で生まれたと言われる空手の原型は、「手(ティー)」と呼ばれていました。中国や東南アジアとの大規模な交易が盛んに行われた15~16世紀の大航海時代には中国武術が伝来。独自の発展を遂げていた「ティー」に中国武術の長所が取り入れられ、今の形になったものが現在の「空手」とされています。
戦後わずか半世紀の間に国境や言語、宗教、体制、人種の壁を超え、世界中に大きな広がりを見せた空手は、沖縄の持つ文化の中でもほかに類を見ない魅力を持つこと。
また、「空手に先手なし」という偉大な哲理(てつり/奥深い道理、理念)と「命どぅ宝(ぬちどぅたから/命こそ宝である、の意味)」の生命尊重の思想が根底に流れる「平和の武」であり、国際社会に求められ、大きな貢献をするものと確信できること。
10月25日の「空手の日」には、こうした奥深い意義と魅力を持つ沖縄伝統の空手が今後ますます発展し、世界の平和と人々の幸福に貢献することへの願いが込められているのです。
奉納演武プログラム
空手を創造し、育み、受け継いできた先人たちに敬意を表し、「空手の日」・「空手発祥の地・沖縄」を広く国内外に発信する目的で行われた奉納演武。会場は沖縄空手会館特別道場の「守禮之館」です。2018年8月1日から1週間にわたって開催された第1回沖縄空手国際大会の初日にも奉納演武が行われた地でもあります。
玉城デニー沖縄県知事(代読・山城貴子文化スポーツ統括官)の挨拶の後、沖縄を代表する6人の沖縄伝統空手家が登場。
池宮城政明沖縄県伝統空手道振興会事務局長によるそれぞれの型の解説も行われましたので、要約ではありますが添えておきます。
松林流・範士十段による「泊(とまり)チントゥ」

沖縄県空手道連盟会長 平良慶孝(たいらよしたか)さん

沖縄県空手道連盟会長 平良慶孝(たいらよしたか)さん
泊地方に残る古い型で、重厚さと軽妙さ、敏捷性を兼ね備え、攻防の技を同時に行います。
演武線(定められた演武の移動方向)が斜め一直線になるのが特徴です。
小林流・範士十段による「五十四歩(ゴジューシホー)」

沖縄空手・古武道連盟会長・阿波根直信(あはごんなおのぶ)さん

沖縄空手・古武道連盟会長・阿波根直信(あはごんなおのぶ)さん
小林流の古流の型。緩急自在でバランスがとれており、首里手(しゅりて/すいでぃー。琉球王国の士族たちによって発展した空手の系統)としては珍しい拳での突きなども用いられます。
「武士松村」として名高い武術家・松村宗棍(まつむらそうこん)が最も得意とした型と伝えられています。
少林流・範士十段による「セイサン」

沖縄県空手道連合会会長、国際沖縄少林流聖武館空手道協会会長・島袋善保(しまぶくろぜんぽう)さん

沖縄県空手道連合会会長、国際沖縄少林流聖武館空手道協会会長・島袋善保(しまぶくろぜんぽう)さん
松村宗棍(まつむらそうこん)から伝授された型。空手の基本動作が多く組み込まれ、鍛錬型として初心者から高段者まで好んで稽古されますが、高難度の技もあり熟練するまでに長い年月を要するそうです。
少林寺流・範士九段による「ワンシュー」

全沖縄空手道連盟会長・佐久川政信(さくがわまさのぶ)さん

全沖縄空手道連盟会長・佐久川政信(さくがわまさのぶ)さん
鶴の片足立ち、肩車の投げ技など独特の動きが含まれる型です。
上地流・範士十段による「サンセーリュー」

沖縄空手道協会相談役・仲程力(なかほどつとむ)さん

沖縄空手道協会相談役・仲程力(なかほどつとむ)さん
速さと力強さ、静と動から巧妙に組み合わされた変幻自在の攻防動作が特徴の型。
鎖骨の間など急所を狙って打ち下ろす隠し拳も含まれます。
古武道・範士十段による「前里(めーざと)のヌンチャク」

沖縄県指定無形文化財保持者・仲本政博(なかもとまさひろ)さん

沖縄県指定無形文化財保持者・仲本政博(なかもとまさひろ)さん
ヌンチャク技は相手の攻撃力を弱め、殺意をくじくのが目的。繰り返しの動作の中に多くの変化が秘められていて、それを理解できるとまったく違った感覚で見えてくると言われている奥の深い技です。2本のヌンチャクを使用します。
詳細情報
開催日時
2019年10月25日11:00~12:00
開催場所
沖縄空手会館特別道場「守禮之館」
沖縄県豊見城市豊見城854-1
電話番号:098-851-1025
入場料
無料
主催
沖縄県、沖縄伝統空手道振興会、沖縄県議会
お問い合わせ
2019年度沖縄空手イベント開催事業事務局(琉球新報開発内)
電話番号 :098-865-5262
FAX番号:098-865-5281
文化観光スポーツ部空手振興課(代表)
那覇市泉崎1-2-2 行政棟12階(南側)
電話番号:098-866-2333
ホームページ
沖縄空手イベント開催事業
アクセス
【車】
那覇空港より車で約15分
沖縄空手会館
沖縄県豊見城市豊見城854-1
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マップコード
33 066 057 *86
駐車場
無料
100台
【那覇空港から公共交通機関を利用して向かう場合】
沖縄都市モノレール「ゆいレール」旭橋駅下車 → 那覇バスターミナルで那覇バス交通33番または46番に乗車して豊見城公園前下車。徒歩約5分
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まとめ
奉納演舞終了後にはフォトセッションの時間が設けられます。通常は関係者のみの場合がほとんどなのですが、こちらのイベントでは、何と最後に観覧に訪れた一般の方を交えての撮影も。沖縄空手を支え、受け継いできた方々と、沖縄らしい風景の中で一緒に写真を撮れるまたとない機会です。
誰でも参加OKなので、お見逃しなく。
素人の目にも一朝一夕にできるようになるものではないとわかる、熟練という言葉にふさわしい動き。2018年の奉納演舞とは披露された型や演武者も少しずつ異なりますが、やはり伝統の重みと日々の鍛錬の積み重ねを感じるすばらしいものばかりでした。
そして、沖縄ならではのたたずまいの「守禮之館」で行われるからこその雰囲気もあり、空手ファンならずともぜひ一度足を運んで味わってみていただきたいと思います。
10月27日には、首里城祭の一環として同日14:30まで行われた琉球王朝絵巻行列に続き、国際通りで空手の日記念演武祭が開催されました。国際通りを埋め尽くす空手家たちによる一斉演武をはじめ、代表者演武、5つのエリアに分かれての各団体演武の様子、今年もご覧に入れます。
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2018年空手の日・奉納演武
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