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窯焚きの様子をお伝えすることから始まった「読谷山焼・北窯の登り窯とやちむん作り」。
数か月にわたって沖縄県読谷村のやちむん(焼きもの/陶器)の里、読谷山焼・北窯にお邪魔して土作りや登り窯の修繕作業などの取材をさせていただいた記録をもとに、沖縄の生活になくてはならない日常の器に隠された物語をお伝えしています。
今回は節目の第10回。ここまでおつきあいいただき、本当にありがとうございます。
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第9回でお目にかけたのは、狭間(さま)と呼ばれる炎の通り道を備えた登り窯の袋(ふくろ/焼成室)を仕切る壁を築く工程。重力の影響を想定して後ろに反らせるなど、その過程には様々な工夫が凝らされていました。
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今回は、その壁の上に屋根を作る作業。
乾燥を終え、倉庫で眠っていた大量のにんじんたちの出番です。さっそく見ていきましょう。壁が完成した4日後、5番の袋はこのような状態に。
入口部分にはアーチ状にレンガが組まれ、屋根のカーブの基礎となるであろうベニヤ板が窯を覆っていました。
入口部分の木枠は、以前窯を修理した際に作ったものなのだそう。通常の長方形のレンガに加え、台形や薄いレンガも組み合わせ、きれいなアーチを作っています。
屋根を覆うベニヤ板は、壁から垂直方向にアーチを描いて渡し、両端の部分は必要な形にカットしたものを組み合わせて使っていました。
袋の内部にはおびただしい数の支柱。角材などで補強も施され、これから載せられる土の重さを象徴しているようです。
6番の袋の作業を追いながら、ここに至るまでを順に見ていきたいと思います。
支柱を立て、ベニヤ板でアーチを作り固定する
足元には補強のために板が敷きつめられています。
まずは7番の袋との境界となる壁沿いに支柱を設置。すべての支柱の高さを調節して板を載せ、釘を打って固定します。
ベニヤ板に曲線をつけ、5番の袋側の壁まで渡し、角材の上から釘を打って支柱の上の板に固定。
アーチが最も高くなる部分に支柱を立て、同様に高さを調整して板を載せ、固定します。
下降するカーブを描く部分には、先に角材を取りつけた板をベニヤ板に固定し、支柱に斜めに載せて釘も斜めに打ちます。
5番の袋側の壁には板と角材で作った支柱を置き、壁との間にベニヤ板を挟み込んでいました。この後、板などを使ってさらに様々な補強を行います。
ベニヤ板から突き出している釘の先をカット。火花が散ります。
土とにんじんを積む
ここからはいよいよにんじんたちの出番。
ベニヤ板の上に麻袋を敷き、タッカーで留めています。これはベニヤ板に土がくっついてしまったりするのを防ぎ、外しやすくするための工夫。
窯の土、屋嘉(やか)、前兼久(メーガニク)、わらをブレンドした土をまとめた赤っぽい色の「だんご」や黄土色の前兼久(メーガニク)を挟みながら、ベニヤ板のカーブににんじんの先端を添わせるようにして積んでいきます。
壁の部分にはまず三角形ににんじんを積みます。屋根の重力と屋根の重みで最も負荷がかかるため、かなりしっかり突き固めておかないといけないということでした。
屋根の立ち上がり部分はある程度土で埋め、にんじんを置いたときの傾斜を緩やかにしてから積みます。
壁部分と、積み始めには両端の太さの変わらないにんじんを、天井に近づくにつれてにんじんの角度がついてくると先細りに成形したにんじんを使います。
その場で削ってさらに先細りにする場合も。
1日の作業で2/3ほどが仕上げられていきました。
たたいて締め、支柱やベニヤ板を外す
2日後にうかがうと、真新しい屋根に覆われた窯の姿がありました。
にんじんの上からさらに土をかぶせて仕上げられています。大きめの木槌を使ってたたき締めた表面はとてもなめらかです。
この数日後には支柱とベニヤ板が外され、袋の中にも入ることができました。
内部の様子はこちら。
ドーム状の屋根ににんじんの先端が赤っぽい丸い斑点を作り、土のプラネタリウムのようです。
7番の袋も屋根の一部を補修していました。
おわりに
にんじんとともに屋根に使われていた「だんご」を作る様子もとても興味深いものでした。窯の土と屋嘉(やか)、前兼久(メーガニク)、わらを混ぜ合わせ、水を加えて程よいところでまとめます。
一定方向に踏み、中心を空けたドーナツ形にまとめます。
さらに踏み、内側から外側へ土を丸めるようにまとめ、中心に山を作ります。
その山を外側へ押し出すように、一定方向に踏みます。中心部分までしっかりと踏み、ドーナツ形に戻します。
ここまで約40分ほど。
この後、ドーナツの中心の空いたところから外側へ土を丸めるようにまとめてできあがり。
ドーナツ形にした土は山にするよりも取る量の調整がしやすく、手袋についてしまうものも最小限になってまとめやすい状態。できる限り小さなスペースと短い時間で土を混ぜ、無駄なくまとめるための知恵が詰まっていました。
基礎はベニヤ板のアーチ、解体した登り窯の土を再利用して作ったにんじんが主な建材。
解体が始まった日からぽっかりと空いたままだった穴が、約1か月でふさがりました。赤茶色の美しい屋根に覆われた登り窯は、少しの間止まっていた時間が動き出し、息をふきかえしたようにも感じられます。
以前と同じ姿を取り戻しつつある登り窯。
ほとんど完成したように見えますが、実際に使える段階にはなく、やらねばならない作業はまだまだ残っています。
次回は、「フチミ」と呼ばれる空焚き作業と色見(イロミ/イルミ:炎の回り具合や窯内部の温度を知るためのテストピース)用の穴を開ける作業をお目にかけたいと思います。
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