轟の滝はどんなところ?
琉球王朝時代から特別な存在だった
轟の滝は琉球王朝時代から景勝地として県民や王族に親しまれてきたスポットです。
第17代国王である尚灝王(しょうこうおう)はこの地に納涼殿を作り、旅の疲れを癒していたと紀伝があります。民達も滝の前で水しぶきと大自然の清らかな空気を浴びて涼を取っていたそうです。その景観の美しさに、訪れた中国の使者は書物に轟の滝についての記述を残し、歌人が轟の滝の和歌を詠んだと言われます。
沖縄名勝地の一つ、かつては集落の重要な水路として活躍
轟の滝は1956年(昭和31年)に沖縄の名勝地に指定されました。つまり、文化的財産、芸術的価値が高く評価された滝なのです。
しかし、地域住民にとっては文化的財産以上に価値のある存在でした。轟の滝の下流は数久田(すくた)と言う地域で、数久田は方言で「シッタ=湿っている」という意味です。名前の通り、数久田は水が豊かな湿地帯で稲作が盛んに行われた地域でした。
ですが、時代とともに水田からサトウキビやパイナップルを育てる畑作が増えて、沖縄戦後は水田の姿はほとんどなくなったそうです。
その後、生活用水の需要が増加した為、1959年(昭和34年)に轟の滝に用水路を設け、簡易水道として数久田集落の水源となり人々の生活用水や農業用水の役割を担っていました。当時の用水路が今でも残っています。
沖縄で最も訪問しやすい滝スポット
轟の滝は久志岳(くしだけ)と辺野古岳(へのこだけ)を水源とする滝であり、名護市が誇る観光スポット・パワースポットの一つです。滝といっても場所は公園の敷地内です。
2017年の改装によって、バリアフリー・おむつ替えができるトイレ・無料駐車場などが完備されて、老若男女問わず誰でも気軽に訪れられる場所になりました。
改装後は一気に来客数が増え、3年間であっという間に60,000人以上の利用者が訪れています。
ここまで多くの方に利用してもらえたのは、管理者の方とスタッフの方のたゆまぬ努力があってこそ。現在は管理者の方1名とスタッフの方1名のたった2人で、広大な公園内のトイレやテーブルを常に除菌し、景観を崩さないように草木の管理を行っています。
植物を観覧したい人に向けて木や花に名前と簡単な説明文を設けるなど、利用者に楽しんでもらう工夫も、管理者とスタッフの方がアイディアを出し合って盛り上げているようです。その結果、訪れた利用者は「公園内がいつも綺麗で利用しやすい」と声が多く、県内外問わずリピーターになってくれるそうです。
轟の滝の見どころポイント
滝
こちらが今回のお目当て、轟の滝です。
- 滝の落差:28m
- 滝壺の幅:8m
- 滝壺の深さ:1.5m
時代を超えて、多くの人を魅了してきた轟の滝。沖縄名勝地に恥じない迫力ある眺めです。展望台の先端に立つと、涼しげな風と水しぶきを肌全体で感じます。マイナスイオンに包まれて、心身共にリラックスできる場所でした。
足場はグレーチング(格子状の踏み板)を使用しているので、物を落とさないよう注意してください。滝をカメラに収めたい方は、三脚の固定に一苦労するかもしれません。
また、雨の日や後日は東屋まで霧状の水しぶきが飛んでくるほど水の勢いが強まります。その時は、ちょっとくらい濡れても気にならない格好がいいかもしれません。
遠目に観るとわかりますが、滝のそばには赤く大きな一枚岩があります。この岩ができたのは今から約1,500万年前、高さはなんと80mにも登る大岩です。
展望台から少し離れて、滝と一枚岩を収めた写真を撮ると良いでしょう。
御先七御水(うさちななうびい)
広場を抜けて滝の方へ進むと、何やら気になる石碑が見えてきました。実はこちら御先七御水という水の神様を祀る場所です。名前に「七」が入っている通り、この石碑は県内の七ヶ所に設置されています。
- 数久田 轟(轟の滝)
- 伊佐川御水
- 今帰仁村御先村代御水
- 糸満大度浜さしちん御水
- 源河御先
- 大謝名森川御水
- 銘苅御水
これらは、琉球八社の一つ「末吉宮」に水の神様の拝所があり、そこへと繋がっているとされています。琉球八社とは、沖縄を代表する八つの神社のことです。琉球王朝を守護する神様が祀られており、王族によって大切に扱われてきました。
気軽に訪れられる場所になりましたが、とても神聖な水が流れる場所です。川や公園内は綺麗に遊ぶよう心がけましょう。
また、岩場の近くには滝の方向に向かって、ユタ(沖縄の霊媒師のこと。本土で言うイタコの様な存在)が祈りを捧げる祭壇のような石がありました。ユタは自然を神様とする自然崇拝です。この地、この滝は神様が宿っているのかもしれません。
川と岩場
滝壺から溢れた水が数久田の住宅街へ、そして海岸へと続く川です。公園内の中心をちょうど横切る形で流れています。広場、もしくは中州から階段を下ればすぐ川です。
晴れている時なら水位は10cmほど、流れもゆるやかなので親子で川遊びを楽しむことができます。
下流の方へ向かうほど深くなり、一番深いところで50cm以上になります。雨が降った後は水の勢いも水位も増すので、お子様を遊ばせる時は特に注意しましょう。
実は岩場も必見のポイント。滝壺に続くこの岩群は、マグマが地表に出る前に固まった石英斑岩という岩です。沖縄にも実は火山が存在したという事実に驚きました…!滝のすぐ横に見える巨大で赤い一枚岩も、古代のマグマが作り上げた物です。岩場は水の流れが速く、また見えにくいですが苔が生えていて滑りやすいので、なるべくは観るだけで楽しむと良いでしょう。
森林浴エリア
森林浴とは、大自然を散策して綺麗な空気を全身に浴びるレクリエーションです。森林浴エリアに一歩踏み入れると、一気に温度が下がったことが実感できます。奥まで進むと階段や段差が見えてきます。車いすの方は、途中で進路を変えて、田園への道に繋がるので安心です。
途中、何やら川へと繋がる階段を見つけました。降りることも可能ですが、こちらは公園の管理区画外です。管理区画外には、沖縄の各地に生息する毒蛇である「ハブ」が出ると管理者の方からも警告されています。このエリアの入り口にロープやバリケードはなく、誰でも入れる状態ですが、ハブの出現や石階段で足を滑らせるなどの危険があるので立ち入るべきではありません。
家族で楽しめるポイント
川遊び
川に入る事はできますが、水位は低く、全身つかるほどはありません。水遊びや、川で泳ぐ魚や生き物を捕らえて遊んでみましょう。川遊びに必要なバケツや魚取り網を持参してもOK!この川には多くの生き物が生息しています。
- オオウナギ
- ゴクラクハゼ
- クロヨシノボリ
- オオクチユゴイ
- ユゴイ
- ヒラテテナガエビ
- モクズガニ
- ミミテナガエビ
- コンジンテナガエビ
- トゲナシヌマエビ
- ミゾレヌマエビ
- フネアマガイ
- イシマキガイ
- カワニナ
- オキナワオオミズスマシ
- リュウキュウハグロトンボ
残念ながら、取材時に上の生き物達をカメラに収める事はできませんでしたが、近くで遊ぶ子ども達は簡単にエビを捕まえてとても楽しそうでした。捕った生き物は持ち帰らず、必ず元いた川へ返してあげてください。
管理事務所の横に、足洗い場とシャワーが設置されています。自由に使っていいということなので、川遊びの後はここで泥や砂を流しましょう。シャンプーを持参しても良いようです。
川の水は飲用できないと注意書きがある通り、透き通った綺麗な水ですが飲んではいけません。
また、下流に進むほど水位が上がります。足元が見えにくくなるため注意して進んでください。下流の方へ進むと、岩場にフネアマガイが張り付いていました。踏まないようにそっと歩いて向こう岸へ渡れます。
昔建てた用水路より先は公園の管理区画外なので、これ以上先に進むことは控えましょう。下流に進むほど草木が生い茂り、生き物が多くなりますが、同時にハブ(毒蛇)が生息している可能性がありますのでご注意ください。
バーベキュー
轟の滝公園内では、滝や川を眺めながらBBQが楽しめます。(場所の使用料はかかります)場所は、広場と中州の2か所です。
◉ 場所のみのレンタルなので、食材や道具は持参する必要があります。
◉ 施設内にゴミ箱はないので、出たゴミは必ず持ち帰ってください。
◉ 芝生が燃えてしまうため、飛び火する炭火は禁止です。ガスコンロで利用しましょう。
沖縄はビーチでバーベキューするのが主流ですが、川辺でバーベキューしたい人にはうってつけの場所です。
バリアフリー完備
園内は、川へと降る階段と展望塔に登る階段を除いて全てバリアフリー設計になっています。車椅子や松葉杖の方、お年寄りの方でも利用しやすい環境です。地元の婦人会やデイサービスの利用者も、轟の滝公園を気に入って何度も利用してくれると、スタッフの方が語ってくれました。
轟の滝を楽しむ時の服装
轟の滝公園内は激しい動きをしなくても散策できる場所です。見て回るだけなら、どんな格好でも問題ありません。ラフな格好から、おしゃれ着、好きなスタイルで楽しんでください。何度か公園内を散策した際、必要だなと思ったのが、長袖・サンダル・日焼け止め・虫除けスプレーです。
公園内はいくつか東屋がありますが、ほとんど影がなく、日差しに当たり続けることになります。沖縄の日差しは非常に強いので、園内を周る頃だけでかなりの紫外線を浴びることになるでしょう。
森林浴エリアに入ると一気に虫の量が増え、あっという間に何箇所も刺されてしまいました。事前に虫除けスプレーをかけておけば良かったと後になって気付きました。また、左右を木々に囲まれている為、服を引っ掛けてしまうかもしれないので、女性ならヒラヒラした生地の服装は避けた方が無難です。
川遊びを楽しみたいという方なら、履物はマリンシューズをおすすめします。川は少し大きめの石がゴロゴロ転がっており、流れが急な場所、少し深い場所などがあるので、マリンシューズの方が歩きやすいです。また、誤って貝やエビを踏んでしまっても足を保護できます。
サンダルでも遊べますが、脱げて下流に流されたり、つまずいたりする恐れがあるので、底が浅く脱げにくい物を履くと良いでしょう。
取材時は試しにビーチサンダルを履いてみましたが、川底の石はヌルヌルして滑りやすい印象でした。ちょっと足を入れるだけ、という方ならサンダルでも良いと思います。
詳細情報
住所
〒905-0023 沖縄県名護市字数久田594
マップコード
206 538 057*77
電話番号
0980-43-9299
営業時間
9:00~18:00
定休日
なし
入場料
大人200円/小学生~高校生100円/70歳以上100円
BBQ使用料
2,000円、範囲は40㎡(20名ほどなら余裕で楽しめるスペースです)
散策した時の所要時間
施設内を見て回るだけなら、約20分で1周できます。
駐車場
無料、20台駐車可能です。
トイレ
受付横に有ります。おむつ替え用のトイレも有ります。
クレジットカート
利用不可能(券売機で現金のみ利用可能)両替機も設置しているので、一万円札しかお持ちでない方もお金を崩せます。
飲食
食べ物の持ち込みOKです。園内にある休憩所で召し上がれます。※ゴミ箱はないので、ゴミは持ち帰りましょう。
煙草
園内全禁煙
アクセス
車
那覇空港からアクセスする場合
許田IC(沖縄自動車道の最終地点)を降りて58号線に合流し、約6キロ(車で約20分)直進する。轟の滝の看板が見えたら右折する。
北部からアクセスする場合(美ら海水族館や古宇利島など)
国道58号線を許田IC向けに走行する。右手にローソン名護市世冨慶(よふけ)店がある十字路を超え、600m先に轟の滝の看板が見えるので、左折する。
バス
那覇空港からアクセスする場合
バスでアクセスする場合は、2つのバスから選べます。ルートと所要時間は同じですが金額が異なります。
- 【那覇バス/琉球バス「111」高速バス・名護バスターミナル行き】
乗車し、世冨慶駅で下車する。轟の滝公園まで徒歩で15分(1.2㎞ほど)、タクシーなら3分ほどで到着。運賃は2,150円。 - 【やんばる急行バス 運天港行き】
【那覇バス/琉球バス「111」高速バス・名護バスターミナル行き】と同様のルートで轟の滝へアクセスできる。運賃は1,600円。
所要時間はどちらのバスでも1時間35分ほど。
地図
ストリートビュー
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残念ですがまだストリートビューでは最新の轟の滝を撮影していないようです。
まとめ
今回紹介した轟の滝は、琉球王朝時代から現代に至るまで、沖縄に住む人々に大切にされてきた名勝地です。時の国王や民が涼を得る場所として利用したと記述もあります。
昭和30年代は、滝の水を生活用水や農作物を育てるために重宝されました。また、神聖な水が流れる場所として、ユタ(沖縄でいうイタコ、霊媒師)が祈祷を捧げる場所でもあります。2017年に轟の滝は周囲一帯を改装し、家族や恋人で楽しめる公園として生まれ変わりました。整備された場所なので、リバートレッキングはできません。
改装前の状態を知る方は、現在の姿にきっと驚くでしょう。以前の轟の滝は、木々が生い茂る、どこか近寄りがたい場所でした。ですが、改装を機に再び訪れ、リピーターとなってくれる方も多くいるようです。
名護市の婦人会や、デイサービス利用者の方達の憩いの場になっていると、スタッフの方が語ってくれました。
滝を眺める展望台、小さなお子様でも水遊びができる川、森林浴エリアなど公園内では自然に囲まれた遊びや見どころが複数あります。道具や食材は持参ですが、広場ではBBQも可能です。
川や森林浴を楽しむ際は、管理区画外に入らないようご注意ください。管理区画外は柵やバリケードはありませんが、沖縄に多く生息する毒蛇、ハブが生息しています。
轟の滝は沖縄自動車道の最終地点である、許田ICの6キロ圏内にあります。これから北部へ行く方、北部から南部へ向かう方が気軽に立ち寄って見てはいかがでしょうか。
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