1.宮古島のほとんどの海岸は海水浴場ではない
多くのサイトに宮古島の海岸が海水浴場として紹介されていますが、宮古島市の指定海水浴場は、以下の3か所しかありません。
宮古島市指定海水浴場
- 与那覇前浜ビーチの一区画(株式会社東急ホテル&リゾーツ運営)
(宮古島東急ホテル&リゾーツの正面ビーチのみ) - サンセットビーチ(みやこサンセットビーチ運営)
- デイズビーチ(デイズビーチ伊良部島運営)
ただし、指定海水浴場であっても、神奈川県湘南エリアや和歌山県白浜エリアなどの本土の海水浴場とは違い、監視員の数も少なく、海の家もほとんどありません。そのため、指定海水浴場に行く際でも、ある程度の事前準備をしていくのがおすすめです。
また、観光サイトや雑誌などで掲載されているほとんどの有名な海岸には監視員がおらず、海で遊ぶ際には必要な準備は全て自分たちで行い、万が一の際には自分たちで救助を要請しなければならないという側面もあります。ですので1人で海に入ることはせず、必ず誰かと一緒に海に行きましょう。
海でなにかが起きた際、もしくは危ない状況を見かけた際は、110番の前に海上保安庁118番へ連絡することを覚えておくと安心です。
なお、118番通報に関しましては2019年11月1日から聴覚や発話に障害がある方向けのNET118が運用開始されました。こちらは事前登録が必要なので、以下のURLを参考にぜひ活用してください。
海のもしもは118番
118番
海上保安庁 NET118の登録方法も紹介されています
2.当日の天気予報と風向き、潮の干満時間を調べる
海はプールのように毎日必ず穏やかで、安全であるとは限りません。
私達ツアーガイドが一番重要視するのが、天候と風向きです。私は1週間先の天気予報を常にチェックし、台風シーズンの9月には2週間先までの予報を複数のアプリやサイトを利用してチェックしています。
宮古島の海岸の多くは風向きによって穏やかさが大きく変化します。風向きが合わないポイントに入ると、珊瑚礁が複雑に入り組んでいるため、非常に見えづらい離岸流(りがんりゅう)が発生する可能性が高くなり危険です。
また、ポイントの多くは干潮時間には珊瑚礁が干上がるほど浅くなる場所もあり、シュノーケリングに適した時間が異なります。そのため、必ずシュノーケリングに行く日の朝までに、宮古島の天気予報と風の向き、干満時間をチェックしておきましょう。
例えばこちらのポイントは、南西の風が吹く際には非常に穏やかになります。また干潮時間に近くなると、外洋の珊瑚礁により波が遮られ、非常に穏やかになり泳ぎやすくなります。しかし、東や北の風が吹く場合は外洋側の珊瑚礁部分で横に流れる強い離岸流が発生し、すごい速さで沖合へと流されてしまいます。
このように、毎日コンディションが変わる海の状況をきちんと理解し、事前準備をして海に向かいましょう。
お天気予報サイト
私が使用しているサイトのうちのひとつです。宮古島の天気予報、風向き、干満時間が全て確認でき、一般の方でも見やすい作りになっています。
離岸流(りがんりゅう)とは?
波は岸に打ち寄せた後、沖へと戻ろうとします。その流れが一か所に集中し、驚くほどのスピードと強さで沖へと向かいます。これを離岸流、もしくはカレントと呼びます。
離岸流の見つけ方は様々なサイトで紹介されていますが、慣れていないとすぐに見分けるのは困難です。また、宮古島の場合はアウトリーフと呼ばれる沖合に隆起した浅い珊瑚礁付近でも発生するので、より分かりづらいです。
離岸流について写真や動画付きで説明している海上保安庁のページです。
【離岸流につかまってしまった場合は?】
万が一離岸流につかまってしまった場合、第一にするべきことは、パニックにならず落ち着いて浮力を確保することです。そして流されている方向を見極め、その流れを横切るように泳ぎます。
離岸流は一部分だけなので、横に泳ぎ離岸流を抜ければ普通の潮流に戻ります。流れが止まるところまで横に泳いだら、慌てずに戻ってくるか、泳げない方はそのまま浮いて救助を待ちましょう。流れに逆らって泳いで岸に戻ろうとすると余計に危険なので、無理はしないでください。
ご参考までに私の友人は、趣味のサーフィンの際に離岸流に気付かず、沖合2㎞まで流され、さらに6㎞隣の海岸まで流されましたが、サーフィン板の上に座って浮いていたので、無傷で漁船に救助されました。流されてしまっても慌てずに浮いていれば助かります。落ち着いて対処しましょう。
3.マリンブーツやグローブを用意する
宮古島は珊瑚礁が隆起(りゅうき)してできた島です。そのため、ビーチには鋭くとがった石灰岩が至る所に飛び出しています。
また、水中の砂や岩の中にはウニやエイ、オニヒトデ、オニダルマオコゼなどの有毒生物が潜んでいることがあるので、けがをしないためにもマリンブーツを用意しておくと安心です。
グローブは水中で不意に手をついた場所が実は珊瑚だったり、有毒生物がいたりすると、とても強い痛みを伴う怪我をします。
また、クラゲに刺された触手を剥がそうとして手に刺さるなどの二次被害もあるので、用意しておいた方が良いアイテムです。私はツアーの際、グローブを着用していただいてるのですが、実際にシュノーケリング時にウニに気付かず手をついてしまった方が、グローブのおかげで怪我をせずに済んだ経験があります。
マリンブーツは約1500円程度で購入することができますし、約500円程度でレンタルを行っているショップもあります。
グローブに関してはレンタルをしていないところがほとんどなので、持参されるのがおすすめです。マリングローブは約2000円程度で購入でき、ウェットスーツと同じ生地でできているので丈夫です。一度だけ使用する場合は一般的な軍手でも代用ができます。
4.自分の使用するシュノーケル器材の使い方をきちんと確認する
新しく購入した器材を使用する場合は、取扱説明書を読んで使用方法をきちんと確認しましょう。
例えばマスクを購入した際、初めて使用する場合は生産過程で油膜などが付着し、レンズが曇りやすいことが多いです。そのため、曇り止めもマスクと一緒に購入するのを忘れないでください。また、レンズの種類によって曇り止めの最適な方法が変わってきます。曇り止めの処置はシュノーケリングで使用する前日から行い、当日泳ぐ直前にも行うのがお勧めです。
フィンに関しては、フルフットフィンとストラップフィンで使用方法が違います。
フルフットフィンは素足のまま使用するので、サイズが合わなかったり、普段からフィンで泳ぐのに慣れていなかったりするとフィン擦れと言って靴擦れと同様のケガをしやすいので、フィンソックスを用意しましょう。購入すると約1600円程度ですが、一度だけの使用ならくるぶし丈の靴下でも代用できます。
ストラップフィンの場合はマリンブーツを履いて使用します。そのため普段の靴のサイズよりワンサイズ大きくなる可能性があります。マリンブーツをはいた状態でフィンを履き、サイズをきちんと確認しましょう。またストラップに切れ目が入っていないかも大切なポイントです。
レンタルをする場合も、器材メーカーによってシュノーケルのつける向き、マスクの水の抜き方、フィンの使用方法などが異なります。適切な使用方法をレンタルしたショップに確認しておくと安心です。
シュノーケル、マスク、フィンの3点セットは約2000円程度から販売されており、レンタル料金も2000円程度が相場です。
5.浮力器具を必ず装着する
これはシュノーケリングをする際の最重要ポイントです。
海に入る際には必ずライフジャケット、又はウェットスーツ、もしくは両方を着用して浮力を完全に確保してください。
私もツアーガイドをさせていただく際は、お客様だけでなく、自分自身もウェットスーツを着用して浮力を確保し、安全を最優先にツアーを行います。
冒頭でお話した通り、宮古島にある海岸の多くは海水浴場ではありません。そのため万が一のことがあった場合、自分で救助の要請をしたりしなければならないのですが、私の友人のように浮力が確保できていれば、救助される確率は非常に高いです。
実際に私も宮古島で離岸流で観光客の方が流されてしまった現場に居合わせ、救助したことがあるのですが、その方がライフジャケットを着用していたために無事に救助することができました。
10月~5月にいらっしゃる方は、水温が20度~23度と低くなり低体温を引き起こしやすいので、ウェットスーツの着用をおすすめします。特に私の経験上、小さなお子様、初心者の方、女性の方、高齢の方は水中でより低体温症になりやすいので、強くお勧めします。
ライフジャケットは約4000円程度で購入できますが、かさばるのが嫌な方は約1000円程度でレンタルができます。ウェットスーツのレンタル料金は約2000円程度が相場です。なによりも楽しい宮古島の思い出を持ち帰るためにも、安全最優先で遊びましょう。
6.自分が浴びる用のお湯を持っていく
宮古島の海岸でシャワーが用意してある場所は限られており、大半はシャワーがありません。近くに港がある場合もありますが、港の水道は、一般の方は使用できません。そのため、2Lペットボトルなどにシャワー代わりに浴びるお湯を用意していきましょう。
私は普段、2Lのペットボトルを男性1人あたり1~2本、女性1人あたり2本、子ども1人あたり2本程度用意しています。
大人数の際には折り畳み式のウォーターバッグなどもお勧めです。また、シャワーが設置されている、いないに限らず、海岸ではシャンプーやコンディショナー、ボディーシャンプーなどは使用しないようにしましょう。
折り畳み式ウォーターバッグ
こちらのウォーターバックは、折り畳み式なのでトランクに入れても場所を取らず、他のアウトドアの際にも重宝し、価格もお手頃なのでおすすめです。
7.海岸に最も近い利用できるトイレの場所を把握しておく
シャワーと同様海岸にトイレがきちんと整備されている場所は非常に少ないです。そのため、ツアーの際には事前にポイントに一番近いトイレの場所でその旨をアナウンスし、利用してから海岸に向かいます。水道と同様、海岸近くの港にあるトイレは、一般の方は使用できません。
特に女性の方やお子様、ご高齢の方と海に向かう際には、事前に地図で近所の公園などを調べるなど、一番近い公共のトイレを見つけておいた方が安心です。
8.水分や食料を持っていく、ただし飲酒はNG
宮古島の多くのシュノーケリングポイントには、海の家や自動販売機などが近くにありません。脱水症状などの対策のためにも、飲み物や食べ物は持参していくのがお勧めです。ただし、海岸にゴミ箱はない場合が多いので、出たごみはマナーを守ってきちんと持ち帰りましょう。
宮古島ではワンハンド・クリーンアクションと言って、海で楽しく遊んだ後は、また次回も美しい海で遊べるように、片手に持てるだけのゴミを拾って持ち帰ろう、というビーチクリーニング活動を行っています。ぜひご協力ください。
なお、海に入る際にはお酒は飲まないでください。飲酒をしながら海に入ると、判断力や運動能力が低下してしまいます。また、脱水症状を引き起こしやすくなり、重大な病気の原因にもなってしまいます。
宮古島にはビーチにぴったりな美味しいドリンクを販売しているお店もたくさんあるので、ぜひご賞味ください。
9.海岸にある木々に触れない
海岸線に多く自生する植物たちは、一見無造作に生えているように見えますが、実際は島の人たちが海岸線を台風から守るために植えた防砂林が多く存在します。そのため、枝を折ったり草をむしったり、木に洋服やライフジャケット、袋などはかけないでください。大切に何百年も守られてきた海岸線の木々は、時々人が入れるようなちょうどいい木陰を作ってくれています。
自然のパラソルを大切にしていきましょう。
島の自然を愛するみなさまへ
この先の砂浜・海岸林一帯は、ヤシガニ、オカガニ、オカヤドカリやホタルなど島の貴重な生物の繁殖・生息地となっています。これらは先人が守り育ててきた大切な資源です。これらを減少させ、破壊するような以下の行為を禁止します。
サンゴ礁に立ったり触るなどして、サンゴを傷つける行為
タモ網等、海の生き物を捕獲する道具を持ち込む行為
海岸線に自生する植物を切る、折る、傷つける行為
煙草を持ち込む行為/ゴミを捨てる行為/餌付けをする行為
許可のないバーベキューをする行為/大きな音で音楽を流す行為
その他、自然環境を害すると判断される行為
宮古島市が自然環境保全条例で定める保全種が豊かに暮らすこの区域を、池間自治会は自然環境保護区域として設定し、保護しています。池間自治会は当該区域での海岸林伐採や開発を一切認めません。
2019年8月29日
池間自治会
10.水中で珊瑚礁の上に立たない
潮の干満によっては珊瑚礁が非常に浅くなり、立てるようなところもでてきます。
ですが、一見岩に見える場所が実は珊瑚だったり、1cmにも満たない小さな生物がたくさん生息していたりする場合が多々あります。そのため、水中ではたとえ岩に見えるような場所であってもなるべく立たないようにしましょう。
シュノーケリング中はフィンを装着するので、うまく立つことができず、珊瑚などを蹴って折ってしまう危険もあります。もしもシュノーケリング中に疲労を感じて休みたくなった場合は、浮力を確保してシュノーケルを口から外し、仰向きに浮いて休憩しましょう。
11.目印になる服を着る、またはフロートや浮き輪を持っていく
近年ではジェットスキーの方も非常に増えており、シュノーケリングのすぐ近くに接近してきてしまうことがあります。暗い色の服のみの場合、船から見えづらくなってしまい事故を招いてしまう可能性があります。
また、万が一流されてしまった場合、救助の船やヘリコプターから目印になる上に、浮力の確保にもなるのでとても役に立ちます。シュノーケリングをする際は蛍光色などの目立ちやすい服を着たり、フロートと呼ばれる目印になるものを用意したりしておくと安全です。
なお、宮古島の紫外線は本州の約1.5倍あると言われており、晴天の日は30分程度外に出ただけでもくっきりと日焼けします。
シュノーケリングは水に入る時間が長いため、スプレータイプやリキッドタイプの日焼け止めは、ウォータープルーフであっても落ちやすいです。日焼けが気になる方、肌が敏感な方はラッシュガードの着用をお勧めします。
12. 無理をしない範囲で遊ぶ
天候が微妙だったり、思いのほか波が高かったり、シュノーケリングは自然が相手なので、どうしても万全の状態ではない日もあります。
そんな時はとにかく、自分が確実に安全だと思える範囲内で、無理せず遊びましょう。宮古島には陸にもたくさんの観光スポットや体験教室などがあります。ぜひ島の楽しい思い出をたくさん持ち帰ることを大切にしてください。
まとめ
宮古島でシュノーケリングに行かれる際は、上記のポイントをぜひ参考にしてみてください。
最後にシュノーケリングに必要な器材をもう一度おさらいしておきましょう。
- マスク
- シュノーケル
- フィン
- マリンブーツ、もしくはフィンソックス
- グローブ
- ライフジャケット
- 季節、ご自身の体質によってはウェットスーツ
- シャワー用のお湯
- 飲み物や食べ物
以上9点です。
ご参考までに、ご自身でレンタルする場合と一般的な宮古島のツアーに参加する場合の相場金額の比較表です。
必要機材 | 個別レンタル料 | ツアー料金 |
マスク、フィン、シュノーケル | 2,000円 | 料金込み |
マリンブーツ又はソックス | 500円 | 料金込み |
グローブ | 2,000円 | ショップによって用意あり |
ライフジャケット | 1,000円 | 料金込み |
ウエットスーツ | 2,000円 | 料金込み |
シャワー用お湯 | 自分で用意 | ショップによって用意あり |
食べ物・飲み物 | 自分で用意 | ショップによって用意あり |
合計金額 | 7,500円 | 5,000円~8,000円程度(半日) |
この他にも、それぞれのシュノーケルポイントごとに独自のルールや、見どころなど、宮古島の海は奥が深いです。旅行日程に時間があり、安全で気軽に楽しみたい方は、ショップツアーに参加されることをお勧めします。
ツアーでは事前にその日の風向きや天候などを見て、その日最適なポイントへ案内してくれます。
ガイドさんは海の中にどのような生物がいるかを知り尽くしているので、見たい生物や景色などをリクエストしてみるのもいいでしょう。また、安全管理も行ってもらえて、器材無料レンタルやお湯等も用意してもらえるので、事前の用意や後片付けも不要です。近隣のトイレの位置やお勧めのカフェおすすめランチ、その他の観光スポットなども教えてもらえます。
ビーチシュノーケリングツアーは半日ツアーの相場が約5000円から8000円程度です。器材レンタル代と事前準備の手間、安全性を考えると、非常にお得な価格設定だと言えます。
離島ならではの手つかずの自然が多く残る、驚くほど美しい宮古島の海を、ぜひ思いきり遊びつくしてください。
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