ダイビングのメジャーなスタイルと言えば、ボートダイビング。

ボートに乗って沖合のポイントの真上まで運んでもらって潜るスタイル。しかし、今回は沖合まで行かず近場でダイビングしてみました。思いもよらぬ、感動に出逢えました。

説明の前に、まずは、映像をご覧ください。

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イノー

飛行機から沖縄の海を見ると、陸地と濃紺の深い海との間に位置するエメラルドグリーンの海域です。

南の島ならではの景色の部分で潜ってみました。港を出港してポイントまでは、ほんの数分!ビーチからエントリーして泳いで行くことができるくらい近場のポイントです。

ここは「イノー」と呼ばれる珊瑚礁に囲まれた浅く穏やかな海域で、昔から「海の畑」と呼ばれ、海の幸を手軽に与えてくれる豊かな場所として大切にされてきた海域なのです。

水面でお出迎え

陸地が目の前に見えるポイントに船を泊め、いざエントリー。すると目の前に何やら赤色の物体がプカプカと・・・

何だろうと目を凝らすと、マングローブの種でした。水面に浮かぶ訳でもなく沈みもぜず、波に揺られてどこへ行くの?って感じでゆらゆらと気持ち良さそうでした。こうやって波に揺られて流れ着いた見知らぬ陸地に新たな新芽が生えると思うと夢がありますね!

イノー種

イノーの水中は?

マングローブの種とひとしきり遊んだ後で水中に目を向けると、自分の足元に珊瑚礁が広がっているではないですか!水深は5メートル前後と非常に浅く、タンクを着けなくてもスキンダイビングで充分楽しめそうな深さなのです。浅いおかげで太陽の光が水底まで届いてとても明るくキラキラとした海です。

枝珊瑚の周りには、青や黄色のカラフルな小魚たちがかくれんぼしている様に見えました。実際、小魚たちは外的から身を守る為に珊瑚の陰や岩の隙間に身を潜めるのです。また、夜になると夜行性のエビやカニが出てきたり、大きめのイラブチャー(ブダイ)が休みに来たりと、昼も夜も楽しめる海域だそうです。

イノー珊瑚3イノー珊瑚1 イノー珊瑚2

水中でご対面

いつもこの付近を潜っている先輩カメラマンの話によると、運が良ければコブシメの産卵が見られるかも知れないとのことで、産卵場所となる枝珊瑚の隙間を覗き込むと真っ白で丸い卵の姿が幾つか見る事ができました。

房の様に波に揺られるアオリイカの卵は今まで何度か見ていたのですが、コブシメの卵はしっかりと珊瑚の枝に固定され、形もピンポン球の様に真ん丸でした。卵の撮影に夢中になっていると、一緒に潜っている先輩カメラマンから「こっちへ来い」の合図。合図に導かれてそちらへ行ってみると、岩の向こうから一匹のコブシメが近寄って来たのです。やや小型の個体でしたが、我々を下見する様に目の前まで近寄ってきました。イカの目は色の識別はされないが、ピントはハッキリしていると聞いていたので、彼女の目には我々ダイバーの姿はしっかりと見えているのでしょう。

産卵の観察

我々の姿を確認し、特に害の無い相手と見てくれたかどうかは定かではありませんが、彼女は枝珊瑚の上に移動しました。が、そこからが彼女と我々の駆け引きが始まるのです。産卵期真っ只中の産卵シーならば、比較的短い時間で近くに寄れるのですが、「運が良ければ・・・」と言う時期だったので、ここは慎重に近寄る事になりました。

やはり彼女も我々の視線?いや存在そのものが気になると見えてなかなか産卵行動に入りません。4〜5メートル離れた場所から様子を見ながら少しずつ躙り寄る様に間合いを詰めるのですが、やはり彼女は我々を気にして卵を生んでくれません。

そうこうしている間にタンクのエアーが底をついてしまい、一旦戦線離脱。船に戻り大急ぎでタンクを交換して元の場所へ戻ると、先輩カメラマンが撮影を開始しようとしているところでした。撮影の邪魔にならない様にそっと近づくと、警戒していた彼女が卵を生み始めていたのです。

くぶしみ

コブシメ

沖縄に多く生息するコウイカの仲間で、沖縄では「くぶしみ」と呼ばれています。その名の由来は「くぶ」は「とても大きい」、「しみ」は「墨」で「大きく墨がたくさんとれるイカ」と言う説があるらしいです。(諸説あり・・・)

沖縄ではアオリイカと並ぶ高級イカで、漁師さんにとっては格好の獲物だそうです。ついでに食べ方はと言うと、イカ墨汁や刺身、天ぷらなどがあり、個人的には刺身が大好物です。

コブシメの卵

先ほどの「彼女」は何度も枝珊瑚の隙間に出たり入ったりを繰り返し、一つ一つ大切そうに腕を伸ばし、やっとの思いで産卵を終えた様です。

そう言えば、通常の産卵なら近くに大きな雄の姿があり、他の雄や外敵から雌を守っているはずなのですが今回の産卵では雄の姿は確認できませんでした。彼女が産卵を終えてどこかに立ち去ってから産卵場所を覗いてみると、直径3センチメートル程の真っ白いピンポン玉の様な卵が産みつけられていました。この真っ白な卵が徐々に半透明になり、中に小さな赤ちゃんの姿が見える様になるとハッチアウトが目前になります。この小さな命が水中に泳ぎ出す瞬間に立ち会う事ができたダイバーはきっと幸せ者でしょうね!

くぶしみ卵

まとめ

陸地から泳いででも行ける目の前の海中で、この様な命の連鎖が営まれているのです。昔からウチナンチュウに大切に守られてきた「イノー」。潜ってみるまでは「近場の浅瀬」くらいにしか思っていなかった場所ですが、沖縄の海の底力を見せてもらった気がしました。

イノー珊瑚4