海の危険生物一覧
ではさっそく海の危険生物について学んでいきましょう。今回は24種類の沖縄県で出会う生物を危険性の高いものから順に生態、被害にあった場合の症状、応急処置をご紹介しています。
また私の身近で起きた実際の被害例もご紹介しておりますので、被害時の状況や症状などを参考にしてください。
1.カツオノエボシ
カツオノエボシの生態
水面に浮かぶ浮き袋と綺麗な青色が特徴的。下に伸びる触手(しょくしゅ)は数mに達することもあります。ひとつの個体に見えますが、実際はヒドロ虫と呼ばれる刺胞動物がたくさん集まってできています。浮き袋で海面を浮遊している外洋性のクラゲですが、風の強い日や台風などが接近すると、ビーチなどにも打ち上げられていることがあります。
陸に打ちあがって死んでいるように見える個体でも強い毒性が残っている可能性があるので、決して触らないようにしましょう。
刺されたらどうなる?
別名「電気クラゲ」の名をもつカツオノエボシに刺されると、その名の通り「ビリビリビリッ!!」とした激痛が走ります。海で刺された場合には、刺された場所に真っ青な触手(しょくしゅ)が残っている場合があり、それを見てカツオノエボシと気付くことが多いです。刺された傷跡はミミズ腫れのように赤く腫れあがったり、赤い痕ができたりします。
場合によっては頭痛、吐き気、呼吸困難、脈拍不整、アナフィラキシーショックを引き起こし、死亡例も報告されています。
刺されて数分後の実際の写真を掲載しますが、苦手な方もらっしゃるかもしれませんので閲覧注意です。
カツオノエボシに刺された際の応急処置
刺されたらすぐに陸やボートに上がりましょう。そのままの場所にとどまるとパニックやショック症状が出て溺れたり、続けて刺されたりする危険性があります。意識障害や呼吸障害などのショック症状が出ないか慎重に経過を観察し、症状が出た場合は直ちに救急車を手配してください。
傷口やその他の場所を決してこすらずに触手が残っていないかを確認します。触手が残っている場合には素手で触らず、ピンセットなどで慎重にはがしながら傷口や残っている触手を海水で綺麗に洗い流します。その後40度から45度のお湯に浸すか、冷やしましょう。
実際の被害例
内湾になっている場所で風の強い日にシュノーケリング中、うなじ部分に「ビリビリッ!」という強い痛みを感じた。慌てて傷口を触ると1m以上にもなる青い触手がはがれてきたため、カツオノエボシに刺されたと判断。
全身ウェットスーツを着ていたため、刺された場所は1か所のみでとどまったが、ウェットスーツの腕の部分にも青い触手がついていた。
その後海水で傷口部分をよく洗い流し、経過観察を行った。1時間程度で痛みと腫れが引いたため、病院には行かずに自然治癒に任せた。
外洋にてボートシュノーケリング中、方向転換をしようと振り返った際に、首元に「ビリビリビリッ!!」と激痛が走った。痛みの箇所を触るとビニールに包まれたような真っ青な触手がはがれた。
近くの水面を見渡したが、波が高く風も強かったため、姿は確認できなかった。急遽船に戻り、刺された患部の確認と状況からカツオノエボシに刺されたものと判断。
傷口やウェットスーツに触手が残っていないのを確認し、海水で傷口をよく洗い流した。
刺された箇所が熱を帯びてきたので、保冷材で冷やしながら帰宅。翌日になってもかゆみが引かなかったため、病院を受診。点滴と塗り薬を使用して1週間程度で治癒した。
船上でアンカーロープを挙げていたところ、ロープと一緒にカツオノエボシを引き揚げてしまった。
勢いで真っ青で綺麗な触手が落ちてきてしまい、刺された瞬間に激痛が走った。
刺された直後は触手の跡が残り、腫れてしまったが被害が大きくなかったので自然治癒に任せた。
2.ハブクラゲ
ハブクラゲの生態
沖縄県や奄美地方に生息しており、クラゲの中でも珍しく泳ぎが得意です。傘に4か所の腕があり、そこから7本ずつ計28本の触手(しょくしゅ)が伸びています。傘は高さが10㎝から15㎝ほどですが、触手は伸ばすと1m以上にもなり、全体的に透明なため気付きにくいです。日光が強い日中はビーチや港など沿岸部の海底に生息していますが、夕方や早朝など日の光が弱まる時間帯には海面近くで見られることもあります。
水深20㎝程度の非常に浅い海域でも被害例が報告されており、打ち上げられた個体でも被害例が報告されているので、決して触らないようにしましょう。
ハブクラゲに刺されたらどうなる?
刺されると激痛が走り、時間の経過とともにミミズ腫れを生じます。触手が長いため、まとわりつくように透明な触手が残っていることがあります。場合によっては呼吸困難や意識障害などのショック症状を引き起こし、死亡例も報告されています。
ハブクラゲに刺された際の応急処置
刺されたらすぐに陸やボートに上がりましょう。そのままの場所にとどまるとパニックやショック症状が出て溺れたり、続けて刺されたりする危険性があります。意識障害や呼吸障害などのショック症状が出ないか慎重に経過を観察し、症状が出た場合は直ちに救急車を手配してください。
傷口やその他の場所を決してこすらずに触手が残っていないかを注意深く確認します。透明な糸こんにゃくのような触手が残っていた場合にはお酢をかけて、触手が白くにごり、失活したのを確認してから、こすらずにピンセットなどで取り除きます。ハブクラゲかどうかわからない場合は、むやみにお酢を使用せず海水を使用します。
その後も症状の変化に注意しながら、患部を冷やし、少しでも様子がおかしいと感じた場合は躊躇せず病院で治療を受けることをおすすめします。
3.オニダルマオコゼ
オニダルマオコゼの生態
サンゴ礁や岩礁、砂の中などに生息しており、大きさは30㎝ほどにもなる個体もいます。小さい個体でも擬態が非常に上手で、近寄ってライトで照らしてもほとんど動かず、見慣れていないと非常に気づきにくいです。
よく観察すると目と口があるのがお判りでしょうか?写真中央に黒っぽく見えるのが目(正面から見て左の眼の方がわかりやすいです)、その下にへの字に曲がった口があります。
この写真を撮るのに50㎝ほど近くまでカメラを近づけましたが、全く動きませんでした。
オニダルマオコゼに刺されるとどうなる?
オニダルマオコゼが自ら刺しにくることはまずありません。砂の中や岩場に潜んでいるのを存在に気付かずに踏みつけてしまったり、手やひざなどをついたりした際に被害にあう例がほとんどです。背びれ、腹びれ、尻びれの中に毒針があり、薄手のウェットスーツや薄手のビーチサンダルなどは貫通してしまいます。
オニダルマオコゼの毒は魚類の中でも最強クラスで、刺された瞬間から激痛が走り、刺された箇所は青や紫色に変色し、発熱、頭痛、けいれん、嘔吐、関節痛、全身麻痺などの症状が現れ、死亡例もあります。
オニダルマオコゼに刺された際の応急処置
刺されたらすぐに陸やボートに上がりましょう。毒性が非常に強く、また注入される毒の量も多いため溺れてしまう危険性があります。ショック症状が出た場合はただちに救急車を手配します。
刺された患部に毒針が残っていないか注意深く観察し、残っている場合は取り除きます。ピンセットなどを持ち合わせておらず、自分で抜くのが困難な場合は、病院で針が残っている旨をきちんと説明し、処置をしてもらうのが適切です。ポイズンリムーバーなどで患部から毒を取り除きましょう。口で吸いだした場合には口もきちんとゆすいでください。その後40度から45度のお湯に患部を浸けて、病院を受診してください。
4.オニヒトデ
オニヒトデの生態
9本から23本の腕をもつ大型のヒトデでサンゴを好んで食べるため、サンゴ礁域で発見されることが多く、沖縄県では各地域で大発生も報告されています。色はオレンジや紫、灰色などバリエーションに富んでおり、日中はサンゴの裏や岩陰などに潜んでいますが、夕方から夜になると表面に出てくることが多いです。見た目が非常に派手で解りやすいので、見つけても触らないのが最大の予防策です。
また、サンゴや岩場などの隙間にむやみに手を入れないようにしましょう。
オニヒトデに刺されるとどうなる?
刺されると傷口が痛み、大きく腫れる場合があります。オニヒトデの棘は折れやすいので、刺さり方によっては皮膚の下に残ってしまいます。オニヒトデの毒は棘の表面に粘膜のように張り巡らされているため、オニヒトデが入ったバケツの水に皮膚が触れただけで症状が出る人もいます。
患部の壊死、皮膚症状、脈拍不整などの症状が現れる場合もあり、アナフィラキシーショックによる死亡例もあります。
オニヒトデに刺された際の応急処置
棘が残っている場合にはピンセットなどで注意深く取り除きます。自分で取れないと判断した場合は無理をせず、病院で処置をしてもらいましょう。その後患部からポイズンリムーバーで毒を吸い出し、患部を40度から45度のお湯に浸けます。ショック症状やアナフィラキシーショックなどがでないか注意深く様子を観察し、異変があった場合には速やかに救急車を手配します。
実際の被害例
オニヒトデ駆除作業終了後に船上にオニヒトデが大量に入った袋を引き揚げていたところ、誤って袋を足の上に落としてしまった。
その際は初めて刺されたので痛みもひどくなく、腫れもほとんどなかったので、自然治癒に任せた。
しかしその後、サンゴの裏に隠れているオニヒトデに気付かず刺されてしまうなどの被害を数回受けているうちに、刺された時の痛みと腫れ、症状がどんどんひどくなっていった。今ではオニヒトデの入ったバケツに手を入れると皮膚がただれてしまうようになっている。
5.ウミヘビ
ウミヘビの生態
ウミヘビと一言にいっても様々な種類がおり、海の中だけでなく岩場の隙間やビーチの草むらの中などでも会う可能性があります。基本的にはおとなしく臆病な性格なので、ちょっかいを出さない限り向こうから襲ってくることはまずありませんので安心してください。
好奇心が強い個体は、泳いでいる時に近づいてきたりフィンをちょろちょろ舐めてきたりしますが、むやみに振り払ったりせずにのんびり構えておいてあげれば、そのうちいなくなります。
ウミヘビの毒性が非常に強く、ハブの50~70倍もあるのは事実ですが、シュノーケリング中やダイビング中に噛まれるのは非常に稀です。実際の被害例も漁や釣りなどで捕まえた際に掴もうとした例や、陸上で産卵中に卵やウミヘビにちょっかいを出した例など、人間が無理矢理ウミヘビをつかもうとした場合がほとんどです。
ウミヘビに噛まれるとどうなる?
噛まれた直後は痛みがなく、腫れもありません。ですが毒が注入された場合には15分から90分後に筋硬直が起こり、痛みを感じます。その後手足の運動障害、筋肉麻痺、脱力感、口唇や舌のしびれなどの症状が出て、重症の場合は呼吸麻痺や心不全を起こし、通常48時間以内に死亡に至ります。
また、アレルギー性抗原を持っているので、2度目の咬傷時には結膜炎、喘息、鼻炎、蕁麻疹(じんましん)などのアレルギー症状を引き起こし、最悪の場合はアナフィラキシーショックを起こして死亡する可能性があります。
ウミヘビに噛まれた際の応急処置
ウミヘビは構造上口が大きく開かず、毒牙は小さいため、噛まれても毒が注入されないことがあります。噛まれた際にはまずパニックにならず、落ち着いて対応しましょう。噛まれた場所からポイズンリムーバーや口を使って毒液を吸い出します。口で吸いだした場合は決して飲み込まずに吐き出して、きちんと口もゆすいでください。
毒が注入されたかどうかを見極めるためにも筋肉のけいれんが起きるかどうか、時間差で痛みが出てくるかどうかなど、症状を慎重に観察しながら病院を受診してください。万が一呼吸停止や心停止が起きた場合には一刻も早く心肺蘇生を行います。
6.エイ
エイの生態
エイの中にはマダラトビエイなど遊泳する種類とアカエイなど砂に潜って生息する種類がいます。人が被害にあうのはほとんどが砂に潜る種類で、砂に潜って擬態している時は目と噴水孔と尾だけを出して隠れています。かなり近くまで近づいても動かない場合が多いですが、ちょっかいを出したり、真上を泳いだりすると尻尾を弓なりに振りあげて攻撃してくる場合もあるので、近づきすぎないようにしましょう。
エイの被害は気づかずに近づいてしまったり踏んだりして刺される場合が多いので、砂地を歩く際にはすり足で歩いたり、浅い海では水面を棒で叩いたりして追い払うようにすると効果的です。
エイに刺されたらどうなる?
刺された瞬間から激痛と灼熱感が走り、エイの種類によって傷口が灰色や白、赤紫などに変色します。全身けいれんやズキズキとした痛みが生じ、重症の場合は嘔吐、下痢、発熱、悪寒、筋肉麻痺、血圧降下、心拍異常などが起こり死亡する場合もあります。
エイに刺された際の応急処置
傷口をよく観察し、棘が残っている場合には素手ではなく毛抜きやペンチなどで注意深く取り除きます。返しがついているため抜きにくいですが、残ったままになっていると患部が壊死してしまう可能性があります。患部からポイズンリムーバーや指でつまんで毒を絞り出し、出血がひどい場合は止血を行いながら、40度から45度のお湯に浸けます。
全身症状や重篤な症状が出た場合はただちに病院で受診してください。
7.アンボイナガイ
アンボイナガイの生態
浅いビーチから水深約25mまでと幅広い水深に生息しています。貝の大きさは8cmから13㎝程ですが、体の2倍ほどもある毒矢を獲物めがけて発射し、獲物が死亡した後に大きな口を開けて捕食します。
人を狙って襲ってくることはまずないのですが、身の危険を察知した際にもこの毒矢を発射してきます。人の被害例は海中に落ちているアンボイナガイを貝殻と勘違いして拾ったり、食べられる貝と間違えて拾って刺されていたりする場合がほとんどなので、水中にある貝殻や貝をむやみに採取しないことが大切です。
アンボイナガイに刺されたらどうなる?
刺されてすぐは痛みを感じないか、蚊に刺されたくらいの痛みしか感じません。ですが10分から20分程で激しい痛みがと患部のしびれが起こり、そのしびれが口や手足まで広がります。その後喉の渇き、吐き気、めまい、涙やよだれ、胸の痛み、視力低下、歩行困難などの症状が現れます。
重症の場合は呼吸困難や血圧低下、視力低下、呼吸困難などに陥り死亡します。
アンボイナガイに刺された際の応急処置
水中で刺された場合、溺死してしまう可能性があるので、急いで海岸に上がり救急車か病院に行く手配をします。しびれやめまい、吐き気、呼吸に異常がないかを確認しながら、傷口をよく確認し、毒針が残っている場合は決して手で触らずピンセットなどで引き抜きます。
その後患部からポイズンリムーバーを使用して毒を抜きます。口で毒を吸い出すと口内に傷があった場合に非常に危険なので、ポイズンリムーバーがない場合には患部を小さく切開し、指で絞り出すようにします。呼吸に異常が出た場合や心停止した場合にはすぐに人工呼吸や胸部圧迫をします。
8.サメ
サメの生態
サメは基本的に人間を餌と認識し、捕食しようと襲ってくることはまずありません。サーフィンやボディーボード、SUPなどで水面を泳いでいる姿を、捕食対象であるアシカやウミガメの姿と謝認識して襲ってくるか、釣りや漁で出た魚の血の匂いに反応して近づいてきます。種類によって日中は岩陰などに隠れて休憩している子もいるので、見かけた際は触ったり捕まえようとしたりしないようにしましょう。
サメに遭遇した際に水面でバチャバチャと音を立てて逃げ出すのはサメを引きつけることになるので逆効果です。サメがどの方向に進んでいくかを冷静に見極め、サメを驚かさず、ひきつけたりせずにやり過ごします。
万が一襲ってきた場合にはサメの一番の急所である鼻を狙って打撃を与えるのが効果的です。鼻以外にも目やエラなど、急所になる部分を攻撃して応戦します。
サメに襲われたらどうなる?
サメの鋭い歯と強力なアゴで噛みつかれると負傷し、重症の場合は出血多量で死亡します。種類によっては背ビレに外敵に襲われた際の威嚇用に棘があり、不用意に触ると刺さる場合があります。
サメに襲われた際の応急処置
傷病者をただちに陸に引き上げ、すぐに救急車か病院へ行く手配をします。傷口を確認し、患部を心臓より高い位置にあげ、患部に布などを当てて強く上から圧迫する直接圧迫止血法を施します。直接圧迫止血でも止血ができないほどの深い傷の場合には患部より心臓に近い部分を3㎝以上の幅のある長い布やベルトなどで動脈が止まるまできつく縛り止血し、30分に1回、最低限の血液を送るように緩めながら、病院に向かいます。ただし、止血帯法を使用する場合はかなりきつく結ばなければならないうえに、専門的な知識が必要になるため、可能であれば直接圧迫止血法で止血しましょう。
9.ヒョウモンダコ
ヒョウモンダコの生態
浅い海の岩場やサンゴ礁、砂と小石が混ざった海水浴場などの海底や、岩場のすき間、石の下などに擬態して隠れています。大きさは5㎝から15㎝程度と小さく、臆病な性格ですぐに隠れたり逃げたりしてしまうので遭遇する機会は少ないです。
興奮すると青いリング状の模様が輝くように見えるため、捕まえようとしたりちょっかいを出したりして噛まれる被害例がほとんどなので、むやみに触ろうとしないでください。また、水底で擬態していることもあるので間違えて踏んだり手をついたりしないようにしましょう。
ヒョウモンダコに噛まれたらどうなる?
噛まれた数分後から顔や首にしびれ、めまい、吐き気、脱力感、視覚障害、言語障害などが起こります。重症の場合には15分程で呼吸困難、全身麻痺の症状が悪化し、噛まれてから90分後に死亡した例もあります。
ヒョウモンダコに噛まれた際の応急処置
噛まれたらただちに陸に上がり、一刻も早く救急車か病院へ行く手配をします。傷口からポイズンリムーバーか、なければ患部を小さく切開し、指で絞り出すようにして毒を抜き、患部を流水で洗います。ヒョウモンダコの毒はフグと同じテトロドトキシンなので、決して口で吸い出さないでください。
病院へ向かいながら傷口より心臓に近い部分を縛って毒が回らないように止血し、呼吸停止、心肺停止などのショック症状が現れた際には心肺蘇生を施します。
10.ゴマモンガラ
ゴマモンガラの生態
ゴマモンガラは50㎝程度の浅い水深から50m近い水深までのサンゴ礁域に幅広く生息しています。通常はのんびりとした性格で、岩場を縦になってゴツゴツとつつきながら捕食している姿や、ななめに傾きながらヒラヒラと泳いでいる姿に遭遇します。
ただし6月から8月の繁殖期(はんしょくき)には産卵床(さんらんしょう)をつくり、卵を守るため非常に獰猛で、噛みつかれるとウェットスーツでも簡単に噛みちぎられます。10m以上離れたところにいても追いかけられて噛みつかれた事例もあるので、十分に注意しましょう。
ゴマモンガラを見かけた際には、落ち着いてゴマモンガラの動きをよく観察します。産卵床を持っている場合は距離が離れていてもその上から動かずにこちらを凝視してきたり、近くの魚を追い払うように攻撃していたりします。産卵床をオスとメスの2匹で守っている場合もあります。臨戦態勢に入っているゴマモンガラを見つけたらゴマモンガラから目を離さずに距離を十分にとって回避します。
ゴマモンガラに襲われたらどうなる?
万が一襲われてしまった場合にはとにかく急いで逃げます。ゴマモンガラは執拗に追いかけてくる場合があり、被害にあった人の中には20m以上も追い回された人もいるので、その場にとどまるのは危険です。噛みつかれる距離まで追い込まれてしまった場合にはエラや目などの急所を狙って、持っているものでできる限り抵抗します。
ゴマモンガラに襲われた際の応急処置
噛みつかれてしまった場合にはすみやかに陸に上がります。感染症を予防するため患部を水で綺麗に洗い、あれば消毒液で消毒します。心臓より高い位置にあげ、患部に布などを当てて強く上から圧迫する直接圧迫止血法を施します。傷口が大きい場合や出血がひどい場合には病院で処置してもらいましょう。
実際の被害例
ダイビング中に「ゴツンっ!」と頭に石が落ちてきたような衝撃を受けた。慌てて辺りを見回すとゴマモンガラがすごい勢いで襲ってきていた。急いで船まで戻ろうと泳ぐが、ゴマモンガラもすごいスピードで追いかけてきたため、持っていた指示棒で応戦しながらなんとか離れた。
船にエキジット後、他のダイバーに確認してもらったところ頭に大きな傷跡ができていた。出血が収まらないため病院を受診、7針を縫うけがをした。
ダイビングのガイド中、近くを泳いでいた別のチームが慌てた様子で水中ベルを鳴らし始めた。何事かと思いそちらを見ると、自分たちの進行方向の先を指さして、腕で大きなバツ印を作っていた。よく見るとすごいスピードでゴマモンガラが正面から襲ってきていた。慌てて持っていたカメラと素手で応戦。5~6回噛みつかれるもなんとかけがなく無事に逃げ切った。
船に上がって確認してみたところ、カメラのレンズ部分に大きな歯形のような傷がついてしまっていた。
11.ウツボ
ウツボの生態
ウツボは浅い水深から深海まで、サンゴ礁岩場など様々な場所で見かけることができます。基本はのんびりと大人しい性格で、穴の中から頭だけ出して口をパクパクさせている姿によく出会います。色や模様のバリエーションは豊富で、頭の大きさからは想像できないほど大きな体をしている場合もあり、2m近い大きさに成長する個体もいます。
ウツボが好んで人を襲うことはまずありませんが、被害にあうケースとしては存在に気付かずに近づきすぎた場合や、写真を撮ろうとして近づいた際に噛まれるケースが多いです。ウツボを見かけた場合は刺激せず、触ったり捕まえようとしたりしないでください。
ウツボに噛まれたらどうなる?
強靭なアゴと鋭い切れ味の歯を持っているため、噛みつかれるとスパッと裂けたように深い傷を負うことが多いです。一瞬で大きく裂けるように切れることもあり、ウェットスーツも簡単に噛みちぎられてしまいます。
ウツボを食べる際にはシガテラ毒という食中毒の原因になる毒を持っている可能性がありますが、噛みつかれた場合、毒は注入されません。
ウツボに噛まれた際の応急処置
ウツボに噛みつかれてしまった場合にはすみやかに陸上に上がります。感染症を予防するため患部を水で綺麗に洗い、あれば消毒液で消毒します。心臓より高い位置にあげ、患部に布などを当てて強く上から圧迫する直接圧迫止血法を施します。傷口が大きい場合や出血がひどい場合には病院で処置してもらいましょう。
ウツボの実際の被害例
ダイビング中に小さな生物を探すのに夢中になっていた。小さなウミウシを見つけたので、しばらく写真を撮っていたところ、「ガッ!」と手に衝撃が走り、慌ててみるとすぐ真横にウツボがいた。
どうやら最初からウツボがそこにいたのだが、ウミウシに夢中で全く気が付かなかった。
速やかにボートに上がって傷口を確認すると、2本の指が刃物で切られたようにすっぱりと2㎝ほど切れてしまっていた。消毒し、直接圧迫をしながら港へ帰り、病院を受診。合計6針を縫うケガだった。
12.ミノカサゴ
ミノカサゴの生態
ゆらゆらと漂うように大きな特徴的なヒレを広げながら泳いでいる姿が美しく、ダイバーやシュノーケラーに人気の高い魚です。種類が豊富で幼魚と成魚で色が違うものなども多く、逃げないので写真の被写体としても人気が高いです。観賞用として飼っている人も多く、普段はのんびり水中を漂う姿や、流れや波がある場所では岩やサンゴ礁のすき間で流されないように隠れている姿によく出会います。
ミノカサゴも基本的には人を襲うことはまずありません。ですが無理矢理動かそうとしたり、捕まえようしたりすると、ヒレを大きく広げて威嚇しながら素早く泳ぎ、攻撃してきます。
ミノカサゴに刺されるとどうなる?
各ヒレの棘に毒があり、刺されるとすぐに痛みが走ります。傷口は赤く変色し腫れ上がり、場合によっては壊疽(えそ)してしまう場合もあります。重症の場合には吐き気や関節痛、呼吸困難などの全身症状が出る可能性もあります。
ミノカサゴに刺された際の応急処置
そのまま水中にいるとパニックになって溺れてしまう可能性があるので、すみやかに陸上に上がります。ミノカサゴの棘は折れやすいため、少し触れただけでは刺さっていない場合もあるので、傷口をよく観察します。
棘などが残っている場合は素手で触らずピンセットなどで慎重に取り除き、ポイズンリムーバーで傷口から毒を吸い出すか、なければ小さく切開し絞り出すように毒を出します。綺麗に患部を水で洗浄したら、40度から45度のお湯につけます。
13.ラッパウニ
ラッパウニの生態
ラッパウニは普段見かけるウニとは雰囲気が全く違い、ラッパ状に開いた棘でサンゴや石などを体に吸着させ、擬態しています。ラッパ状の棘に触れると噛むように閉じて刺されてしまいます。
まんまるな見た目から好奇心で触ってしまったり、存在に気が付かずに手をついたりして刺されるケースが多いです。
ラッパウニに刺されたらどうなる?
刺された際の症状の出方に個人差があり、刺されてもなんともない人もいますが、軽症でも痛みを伴って腫れあがる場合もあります。また、指などの皮膚の分厚いところが刺されてもなんともなく、そのまま顔をこすった瞬間に柔らかい皮膚に刺さってしまい症状が出たケースもあるので、触ってしまった場合は症状が出なくても十分に注意が必要です。
重症の場合にはめまいや言語障害、麻痺や呼吸困難などを引き起こし、心肺停止などの全身症状が現れる場合もあります。
ラッパウニに刺された際の応急処置
ラッパウニに刺された場合は症状がでていなくても十分に患部を観察します。棘が残っている場合は決して素手で触らずにピンセットなどで慎重に取り除きます。その後患部をキレイに洗い流し、40度から45度のお湯につけます。
呼吸困難や心肺停止などの全身症状がでないか体調を慎重に観察しながら、万が一の場合には心肺蘇生などを施しすぐに病院へ搬送する手配をします。
14.ウンバチイソギンチャク
ウンバチイソギンチャクの生態
ウンバチイソギンチャクは内湾に近いサンゴ礁の水深20mほどの場所に生息し、死んだサンゴや岩に付着して擬態しています。生息数は通常そこまで多くないのですが、岩や藻にそっくりなのでウンバチイソギンチャクと知らずに触れてしまい被害にあう人が多いです。
ウンバチイソギンチャクは表面に刺胞毒が詰まった刺胞球を一面に持ち、その毒はイソギンチャクの中でも最強クラスです。刺されてしまうと長期間の入院を必要とする場合もあります。
ウンバチイソギンチャクに刺されるとどうなる?
刺された直後から激痛が走り、頭痛や悪寒が伴います。刺された箇所には斑点状の刺し傷が残り、患部が壊死してしまう場合もあります。重症の場合は腎臓や肝臓の機能低下や多臓器不全を引き起こし、長期入院を必要とします。
ウンバチイソギンチャクに刺された際の応急処置
刺されてしまった場合にはすみやかに陸上にあがり、患部をよく観察します。決してこすらず、大量の海水か真水で丁寧に患部を洗い流し、触手や刺胞球を洗い流します。その後、水か氷で患部をよく冷やします。決してお酢は使用しないでください。
その場では症状が軽くても後から内臓機能に障害が出る可能性があるので、必ず病院を受診しましょう。
15.ハナブサイソギンチャク
ハナブサイソギンチャクの生態
ハナブサイソギンチャクはサンゴ礁域の浅い砂地や岩陰に生息しています。フサフサしたカリフラワーのような見た目で、一見するとソフトコーラルや海藻のように見えます。そのため興味本位で触ってしまい被害にあうケースが多いです。
ハナブサイソギンチャクに刺されるとどうなる?
刺されると電気が走ったような激痛に襲われ、刺された箇所は赤くなり、蚊に刺された時の様な発疹がでます。痛みは通常24時間以内に引きますが、その後もかゆみが残る場合もあります。重症の場合は吐き気、発熱、頭痛、腹痛などの症状が現れ、患部が壊死してしまう可能性があります。
ハナブサイソギンチャクに刺された際の応急処置
ハナブサイソギンチャクに刺された場合は患部を決してこすらず、大量の海水か水で触手や刺胞球を綺麗に洗い流します。軽症で済む場合も多いですが、腹痛や吐き気、患部の壊死など重症の症状が現れた場合にはすみやかに病院を受診しましょう。
16.ゴンズイ
ゴンズイの生態
暖かい海の岩の凹みや岩下のくぼみ、水中に沈んでいる廃タイヤの真ん中の穴などにも生息しています。幼魚の頃には集団で泳ぐ習性があり、可愛らしい見た目から「ゴンズイ玉」と呼ばれダイバーやシュノーケラーからも人気が高いです。
ゴンズイが襲ってくることはありませんが、釣りで釣れることも多く、捕まえようとしたりいたずらをしたりして刺される人が多いです。体表面にも毒があるため、傷がある場合はかるく触れただけでも症状が出る場合があるので、十分注意しましょう。
ゴンズイに刺されるとどうなる?
刺された瞬間から激痛が走り、焼けるような痛みがしばらく続きます。患部は赤く腫れ、水ぶくれになることもあります。重症の場合には患部の壊死や麻痺、しびれが生じることもあります。
ゴンズイに刺された際の応急処置
ゴンズイに刺された場合は、まず患部からポイズンリムーバーで毒を吸い出すか、なければ患部を小切開し、指で絞り出すようにして毒を抜きます。
感染症を防ぐためにも患部を水できれいに良く洗い、あれば消毒液で消毒します。その後40度から45度のお湯につけ、重症の症状が出た場合にはすみやかに病院を受診します。
17.アナサンゴモドキ属(ファイヤーコーラル)
アナサンゴモドキ類の生態
アナサンゴモドキ属のサンゴは総称して「ファイヤーコーラル」と呼ばれており、黄色から薄い茶色っぽい色が特徴で、枝状に広がるものや岩を覆うように成長するもの、板状に成長するものなど、形は様々です。浅い海域に生息しており、場所によっては大量に群生しています。表面から細く毛のようなポリプと呼ばれる触手を伸ばし、プランクトンを捕食します。
岩場に立った際や手で触った際、水着のみで泳いでいる際に刺される場合が多く、皮膚が弱い方やアレルギー体質の方は軽く触れただけでも症状が出る場合があります。
アナサンゴモドキ属にさされるとどうなる?
刺された瞬間はあまり痛まない場合もありますが、その後ジンジンとした強い痛みに変わります。患部は赤く腫れ、かゆみを伴い、場合によっては1週間程度長引くこともあります。
皮膚が弱い人やひどい刺され方をした場合にはミミズ腫れや水ぶくれを生じ、重症の場合には発熱、吐き気、ショック症状を起こす人もいます。
アナサンゴモドキ属に刺された際の応急処置
刺された際にはこすらずに大量の海水で綺麗に洗い流します。強めに当たった場合には刺胞に刺されただけでなく骨格の部分でも怪我をする場合があるので、その際には感染症を防ぐためにも患部を消毒液で消毒します。患部にかゆみ止めなどの外用薬を塗り、ショック症状などが出ないか体調をよく観察します。
18.イラモ
イラモの生態
イラモはサンゴ礁の浅い海や岩場、タイドプールなど比較的日当たりの良い様々な場所に生息しています。一見すると海藻のような見た目ですが実はクラゲの一種で、先端のラッパ状の鞘から多数の触手が出てきて、プランクトンを捕食します。
被害例を見てみるとイラモの存在に気付かずに触れてしまう場合が多いですが、イラモは非常にもろいため、近くを泳いだ際に水流でちぎれたポリプや刺胞に刺された症例も見受けられます。
イラモに刺されるとどうなる?
刺された瞬間の痛みはそれほどでもない場合もありますが、あとからズキズキと強い痛みに変わり、かゆみも伴います。刺された箇所は赤い発疹ができ、かゆみと痛みは数日間続く場合があります。人によっては発熱や吐き気、頭痛を伴います。
イラモに刺された際の応急処置
イラモに刺された場合は、触手や刺胞が皮膚に残っている可能性があるので刺された箇所を海水で綺麗に洗い流します。刺された箇所以外にも飛び散った刺胞やポリプが他の場所に付着している可能性があるので、可能であれば全身を海水で洗います。その後刺された箇所を40度から45度のお湯につけます。
症状や体調の変化に注意し、重症化した場合はすみやかに病院を受診しましょう。
実際の被害例
ダイビング中、小さい生物の写真を撮ろうとしていた際にうねりで体が揺れたため、とっさに岩場をつかんだ。その際にちくちくと何かが刺さったような感覚がして、慌てて手を離したところ、掴んだ場所に海藻のようなものが生えており、これに刺されたのだと思い写真を撮影しておいた。
ボートに上がって他のインストラクターに写真を確認してもらったところ、イラモに刺されたと判明。
その後痛みがどんどん増してきて、手のひらに多数の赤い発疹が現れた。翌日から痛みがかゆみに変わり、市販のかゆみ止めを塗り続けたが1週間程度症状は続いた。
19.ガンガゼ
ガンガゼの生態
ウニの中でも抜群に長い棘をもち、昼間は岩陰や穴の中など暗いところに潜んでおり、夕方頃になると目立つところに出てきて、海藻や微生物などを捕食します。目立つところに出ている時は解りやすいのですが、岩陰に隠れている時は棘だけが出ていることが多く、気付かずに触れてしまい被害にあう例がほとんどです。
ガンガゼに刺されるとどうなる?
ガンガゼは棘に毒を持っているため、刺されると鋭い痛みが走り、患部は赤く腫れあがります。まとめて数か所刺される場合が多く、刺された箇所は小さな黒い斑点が残ります。棘は非常にもろくて折れやすく、体内に残る場合があります。
体内に残った棘は自然に排出されることもありますが、排出されずに残ってしまった場合には傷口が化膿してしまう可能性があります。
ガンガゼに刺された際の応急処置
まず傷口をよく確認し、棘が残っているかどうかを確認します。棘が残っている場合にはピンセットや針などを使い丁寧に取り除き、患部を消毒し、その後40度から45度のお湯に患部を浸します。
どうしても取れずに残ってしまった棘は自然排出されることが多いですが、深く刺さり、痛みが長く続く場合や、心配な場合は病院を受診してください。
ガンガゼの実際の被害例
ダイビング中に中性浮力がうまく取れず、下の岩場に手をついた際に指先に「チクチク!」と鋭い痛みを感じ、手をついたところをみると長い棘のウニがいた。
ボートにエキジット後、痛む指先を確認すると小さな黒い斑点が5~6か所あり、ダイビング用グローブを装着していたが、貫通して刺さってしまっていた。
ポイズンリムーバーと針、ピンセットを使って棘を出そうと試みたが、2か所はどうしても取れなかった。しばらくはちくちくと痛んだが、翌日の夜には痛みがなくなり棘もなくなっていた。
20.ウミケムシ
ウミケムシの生態
日中は主に砂の中や岩の下、葉っぱなどが溜まっている場所などに身を隠して生息しています。夕方から夜になると体をくねらせて泳ぎ、砂の上を歩きます。
体長は5㎝から15㎝程で背中の両側に無数の白い剛毛が生えており、中には毒液が入っています。剛毛は通常寝ていますが、危険を察知すると毛を逆立たせます。
ウミケムシに刺されるとどうなる?
触れた瞬間に激しく痛み、のちにかゆみも生じます。刺された箇所は火傷のような水泡が生じ、症状は1週間程度続く場合があります。
ウミケムシに刺された際の応急処置
刺された箇所を観察すると白い剛毛が残っているので、ガムテープやセロハンテープなどを患部に当てて抜き取ります。手で抜き取ろうとすると毒液がついたり折れたりするので、控えてください。
かゆみや炎症が続く場合は抗ヒスタミン成分を含んだ軟膏を塗布します。
実際の被害例
ビーチダイビングの最中、バランスを崩して水底の砂に手をついた瞬間、「ちくちく!」と痛みを感じた。
立てる水深だったので、立ち上がって指先を確認すると、白い毛が人差し指に無数に刺さっていた。手で抜こうとしたがうまく抜けず、ピンセットを使って引き抜いた。
その後は痛みとかゆみが続いたので、市販のかゆみ止めを塗布した。
21.シロガヤ、クロガヤ、ドングリガヤ
シロガヤ、クロガヤ、ドングリガヤの生態
一見すると植物や海藻に見えますが、カツオノエボシ等と同様のヒドロ虫類の集合体で、羽根のように広がった部分で餌を捕食します。浅い海域の岩場の上や砂地の岩場などに生息し、名前の通りシロガヤは白い羽根、クロガヤは黒い羽根、ドングリガヤは黄色い羽根のような見た目です。
グローブで触った場合には刺されることはありませんが、そのまま皮膚を触ってしまい、グローブに付着したガヤに刺された例や、近くを泳いだ際に水流でちぎれてしまい、巻き上げられ刺された例もあるので、注意しましょう。
シロガヤ、クロガヤ、ドングリガヤに刺されたらどうなる?
クラゲに刺されたようなピリピリとした火傷のような痛みが走ります。刺された箇所は赤く腫れ、次第にかゆみに変わります。稀にミミズ腫れ、水ぶくれ、腹痛、吐き気、寒気、発熱を生じることがあります。
シロガヤ、クロガヤ、ドングリガヤに刺された際の応急処置
触手や刺胞が残っている場合があるので、患部を大量の海水で洗い流します。痛みや赤みがひどい場合にはさらに水道水で洗い流し、40度から45度のお湯に浸けるか、氷水で冷やします。重症の症状が現れた場合には病院を受診しましょう。
実際の被害例
ダイビングの最中に白い羽根のようなものが生えており、好奇心から触ってしまったところ、ピリピリと痛みがはしった。
ボートにエキジット後、痛む部分をみると小さく赤い腫れが生じており、次第にかゆみを伴った。
市販のかゆみ止めを塗布したところ、夜には症状が治まった。
風が強い日にシュノーケリングをしていたところ、腕にピリピリとした痛みが走った。水中を見ると小さい黒い羽根のようなものがちぎれて浮遊していた。泳いだ際にフィンで蹴っ飛ばし、巻き上げたようだった。
シュノーケルを中断して陸上にあがり患部を確認すると、小さな赤い腫れが何か所かできていた。
かゆみが引かなかったので市販のかゆみ止めを塗布して過ごし、翌日の朝には症状は治った。
22.ハネウミヒドラ
ハネウミヒドラの生態
浅いサンゴ礁や岩場、水中に長く設置されているロープや漁礁などに付着して生息しています。海藻のように見えますがこれもヒドロ虫の集合体で、花のように見える先端はヒドロ虫が触手を伸ばしている様子です。
こちらもガヤと同様にグローブで触れた場合、貫通はしませんが、刺胞や触手が残ったままのグローブで皮膚を触ると刺されてしまうので、注意が必要です。
ハネウミヒドラに刺されたらどうなる?
先端の白いヒドロ虫に触れると刺胞に刺され、ヒリヒリと痛み、その後、赤い腫れとかゆみが生じます。
ハネウミヒドラに刺された際の応急処置
刺された箇所には、見えなくても触手や刺胞が残っている場合があるので、大量の海水で良く洗い流します。痛みが激しい場合にはさらに水道水でもよく洗い流します。その後患部を40度から45度のお湯に浸けるか、氷水で冷やします。
実際の被害例
ファンダイビングを楽しみ船に上がる前に、安全停止をしようと素手でロープを掴んだところ、手のひらがちくちくと痛んだ。掴んだ箇所を確認すると、小さな花がついたような植物のようなものがあり、インストラクターに確認したところハネウミヒドラと判明。水中で一生懸命洗い流すようにこすったが、船の上にあがってもひりひりと痛みが続いていたので、熱めのお湯でさらによく洗い流した。
手のひらに赤い小さな腫れがたくさんできてしまい2~3日かゆみが続いたが、市販のかゆみ止めを塗布して完治した。
23.ゾエア(チンクイ)
ゾエア(チンクイ)の生態
ゾエアはカニやエビなどの甲殻類の幼生の総称で、チンクイとも呼ばれます。大きさは1mmにも満たないものもいるので、肉眼で認識するのは難しいですが、噛まれた箇所をよく観察すると、極小の透明な生物が患部に付着しているのが見えることもあります。
海水の流れが少ない湾になっている場所や海藻が多く繁殖している場所、流れ藻などの周辺で発生しやすい性質があります。海水がかぶる程度の海岸線にも生息しているため、砂遊びやサーフィンなどの際にも注意が必要です。
ゾエア(チンクイ)に刺されたらどうなる?
ゾエア(チンクイ)に刺されるとチクチクとした痛みが生じ、刺された箇所は小さく赤く腫れ、かゆみも伴います。皮膚が弱い方は皮膚炎を引き起こすこともあります。
ゾエア(チンクイ)に刺された際の応急処置
ゾエア(チンクイ)に刺された際には、まだゾエア(チンクイ)が付着している可能性があるので、刺された箇所の周辺を重点的に、その他全身を洗い流します。特に波の高いところや砂浜で被害にあった場合は、水着の中の砂の中にも生息している可能性があるので、水着の中もきちんと洗い流しましょう。
かゆみがひどく続いたり、皮膚炎を起こしたりした場合には抗ヒスタミン成分を含む軟膏を塗布します。
実際の被害例
波打ち際で子供と一緒に砂遊びをしていたところ、腕にチクチクとした小さな痛みが走った。痛んだ箇所を見ても何も見えなかったため、そのまま遊んでいると、また数分後にチクチクとした痛みが生じた。
もう一度よく腕を確認すると、砂のなかに紛れて透明な小さな生物がおり、その生物がいる箇所が痛んでいた。
砂遊びを中断し水で洗い流したとところ小さな赤い腫れが数か所できていたが、1時間後には症状が治まった。
24.例外:ジャノメナマコ
ジャノメナマコの生態
ジャノメナマコは吸盤のような模様が特徴的なナマコで、外部からの刺激を感じると、白いひものようなキュビエ器官と呼ばれる内臓を大量に吐き出します。キュビエ器官は触れても強い毒はないのですが非常にくっつきやすく、一度くっついてしまうと剥がすのは非常に面倒です。
キュビエ器官の見た目と吸着力の強さからパニックを起こし、余計に危険な状態になる人がいるので、ナマコの生態をきちんと把握し、落ち着いて対処しましょう。
海に入るときのおすすめの服装
ここまで危険生物の生態や応急処置をご紹介しましたが、一番は大切なことは被害を未然に防ぐことです。危険生物の被害にあわないようにするためには長袖のラッシュガードなどで肌の露出を極力避けましょう。泳ぐのが苦手な方や、初心者の方、小さなお子様には浮力も確保できるウェットスーツの着用がおすすめです。
沖縄県では6月から10月末までの海水浴シーズン中はハブクラゲネットが設置されているビーチがあるので、その中で泳ぐのも有効です。
その他グローブやブーツで手足も保護しておくと安心です。軍手を使用していてすき間からウミケムシの毛が刺さった被害例や、ビーチサンダルを危険生物の棘が貫通した被害例などもあるため、厚手で丈夫にできている海遊び専用のものがおすすめです。
その他私が暮らす宮古島では、離島ならではの気を付けたいシュノーケルの際のポイントがたくさんあります。沖縄本島やその他の離島ビーチで遊ぶ際にもぜひ参考にしてください。
持っていると安心、便利な応急処置グッズ一覧
記事の途中でもご紹介させていただきましたが、被害にあった際には救急手当をする際に必要な道具があります。
ここではいざというときに用意しておくと便利な応急処置グッズをご紹介します。海だけでなくアウトドアや災害時にも便利なので、持ち歩きやすい小さなケースなどにまとめておくことをお勧めします。
はさみやナイフ
止血用の布を切ったり、傷病者の傷周辺の衣類を切ったりする際に使用します。皮膚を傷付けないように先が丸くなっているものや、二次的な怪我をしないように歯が表に出ていないものもあります。
ピンセットや毛抜き
棘や触手などを取り除く際に使用します。
ポイズンリムーバー
患部から毒を抜くのに使用します。患部の大きさによって吸い口の大きさを変えられるものもあります。
テープ
布を固定する際や、細かな棘などを取り除くのに使用します。
清潔な三角巾や布
止血や骨折、消毒など色々な場面で使用します。
ガーゼ
消毒や止血、患部の保護などに使用します。
消毒液
患部の消毒に使用します。
絆創膏
大きさや種類にバリエーションを持たせておくと便利です。
塗り薬
一般的にはかゆみや炎症を抑える薬、抗ヒスタミン成分を含む塗り薬などが多いですが、種類が非常に多いため、用途や個人のアレルギーの有無などに合わせて最適なものを選択してください。
綿棒
消毒、患部に薬を塗布する際などに使用します。
ポケットマスク
人工呼吸が必要な際に口に直接接触しないで呼吸を吹き込むことができます。
手袋
傷病者の手当の際に使用します。薄くて軽い使い捨てのポリエチレン製のものなどがあります。
酢
ハブクラゲの被害の際に有効です。決して他のクラゲにかけないでください。
まとめ
海の生物は基本的に好んで人を襲うことはありません。あくまでも自分の身を守るため、生きていくための手段として強力な毒などを持っているだけです。
海で遊ぶ時には魚達の生きるフィールドで遊ばせてもらっている、彼らの生活を少しだけのぞかせてもらっている、そんな想いと敬意をもって接することが大切です。海の生物はその生態を知れば知るほど非常に面白く、興味深いです。
今回ご紹介した生き物たちは、確かに危険ではありますが、危険性を知ったうえで注意深く観察してみると、気が付かなかった魅力に気付くことができます。きちんとした知識と対処法を知ったうえで、よりたくさんの発見と海の楽しさを満喫してくださいね。
危険生物ファーストエイドハンドブック海編:株式会社 文一総合出版
新装版 野外毒本 被害実例から知る日本の危険生物:株式会社 山と渓谷社
日本の造礁サンゴ類 HERMATYPIC CORALS OF JAPAN:株式会社 海遊社
世界の不思議な毒をもつ生き物:株式会社エクスナレッジ
山渓ハンディ図鑑13 改訂版日本の海水魚:株式会社 山と渓谷社
フィールドベスト図鑑17 危険・有毒生物:株式会社 学研プラス
子どもと一緒に覚えたい 毒生物の名前:有限会社マイルスタッフ
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